研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症(AD)患者では軽度認知障害(MCI)患者や健常者よりも松果体体積が有意に減少していることが報告されている。そのため、松果体体積はAD発症を予測するのに有用であるかもしれない。そこでMCI患者において、松果体体積がAD発症を予測しうるかを検討した。北米のAlzheimer's Disease Neuroimaging Initiative (ADNI)-1、ADNI-GO、ADNI-2のデータを許可取得後に解析した。頭部MRI (3T, MPRAGE)を施行し、12ヶ月以上経過観察したMCI患者237名を対象とした。松果体体積から嚢胞体積を引いた松果体実質体積(pineal parenchymal volume: PPV)を測定し、AD移行群と非移行群のベースライン時のPPVをt検定により比較した。AD移行の予測因子を調べるためにロジスティック回帰分析(強制投入法)を用い、共変量にベースライン時のPPV、年齢、性別、教育歴、APOE-ε4 alleles、MMSE、全脳体積を用いた。さらに、AD移行群と非移行群のベースライン時と最終測定時のPPVを二元配置反復測定分散分析にて比較した。ベースライン時のPPVは移行群(n = 68)の方が非移行群(n = 169)よりも有意に小さかった。ロジスティック回帰分析ではMMSEとPPVがAD移行の予測因子として同定された。二元配置反復測定分散分析では、群間の効果は有意であったが、時間の効果と群間と時間の交互作用は有意ではなかった。つまり、移行群は非移行群よりもPPVは有意に小さいが、どちらの群においても、時間経過によるPPVの変化は認めていなかった。 ADで認められる松果体体積の減少はMCIの時点で生じている可能性があり、AD移行の予測因子になるかもしれない。
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