研究課題/領域番号 |
17K16395
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
井川 大輔 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (00526717)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクログリア / BDNF / 恐怖記憶 |
研究実績の概要 |
マイクログリア由来のBrain-derived Neutrophic Factor(BDNF)発現を低下させるとすくみ反応が低下する。反対に、幼若期隔離マウスはすくみ反応が長時間続くことが報告されており、本マウスから抽出したマイクログリアはコントロールのそれに比べてBDNFの発現が高いことを我々は見出した。以上から、マイクログリア由来BDNFが恐怖記憶消去の障害に関与しているという仮説をたてた。このため本申請では以下のマウスを作成した。マイクログリア特異的発現するiba1配列にテトラサイクリントランス活性化因子を組み込んだ遺伝子改変マウスと、大腸菌テトラサイクリン耐性オペロンで働くTetOオペレーター配列にBDNFプロモーターを組み込んだ遺伝子改変マウスを交配させることで、iba1陽性マイクログリアのみでBDNFの過剰発現を引き起こす。 生後8日目の本遺伝子改変マウスの脳から磁気細胞分離を用いてマイクログリアを単離しBDNF mRNAの発現を評価した。コントロールマウスのマイクログリアと比較して、BDNF過剰発現マイクログリアでは約1000倍のBDNF mRNA発現を認めた。現在、発達過程でのBDNF発現に差があるのか評価するため、発達の複数時点でマイクログリアを採取しており、BDNF mRNAならびにタンパクの発現について解析中である。 BDNFの多寡が恐怖記憶に与える影響を評価するため、fear condition並びにextinction試験を行い、現在コントロールマウス(n=8)、マイクログリア特異的BDNF過剰発現マウス(n=13)であるがすくみ反応に有意な差がみられていない。他に、前頭葉機能や空間記憶を評価するY-maze試験や活動量や不安を評価するオープンフィールド試験を行ったが、現在の匹数ではいずれも有意な差はみられなかった。引き続き解析を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請では、2種類の遺伝子改変マウスを交配させたダブルトランスジェニックマウスを用いるが、死産などが多く目的の匹数を得ることが困難であった。このため充分な行動学的解析や分子生物学的解析を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度で行う予定であったfear condition並びにextinction試験を引き続き行う。仮説通り恐怖記憶消去の障害が認められれば平成30年度の予定通り進めていく。 仮説と異なり恐怖記憶消去に差がないようであれば、恐怖記憶消去後に恐怖記憶賦活試験や再刺激試験を行うことを検討している。
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