本研究の目的は、脳部位間結合に着目し、脳構造画像及び脳機能画像を用いて、老年期うつ病(LLD)の認知症への移行を予測する画像指標の確立を目指し、健常(HC)群、LLD群、軽度認知障害(MCI)群を対象に以下の2点を検討する。 (1)HC群、LLD群、MCI群における脳部位間結合の差異 (2)LLD群における1年後の認知機能の変化と初診時における脳部位間結合との関連
平成31年度は大うつ病性障害の患者においては、健常群と比較し、広範な脳領域でFA値の低下が認められ、大うつ病性障害の患者において平均FA値の低下と符号課題とコンポジットスコアの低成績との有意な相関を明らかにした。本研究で得られた結果は、学会発表(Organization for Human Brain Mapping 2019 ROMA)と論文報告(Yamada:Psychiatry Res Neuroimaging 2020)している。本研究の結果は、気分障害では白質神経線維の微細構造という解剖学的なレベルの異常が存在し、特異的な認知領域と関連していることを示唆する。近年は神経ネットワークを評価する神経画像手法(DTIや安静時機能的MRI(rs-fMRI))が発展してきた。将来的にはDTIとrs-fMRIによる解析の手法を用いて、統合失調症や気分障害などの精神疾患に見られる神経ネットワークの特徴、アルツハイマーなど認知症に特徴的な神経ネットワークを明らかにし、多疾患で臨床症状と結びつけることで疾患横断的な生物学的指標を確立し、従来の症状評価に基づいた診断体系をブレイクスルーする契機としたい。
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