研究課題
ワーキングメモリーなどの認知機能障害は統合失調症の中核症状と考えられており、機能予後の予測因子として知られているが、現存する抗精神病薬にはこの認知機能障害にはあまり効果がなく、神経回路病態も不明である。そこで、本研究は統合失調症モデルマウスを用いて、ワーキングメモリー障害の原因神経回路を探索することを目的としている。本年度は、昨年度本研究代表者が広範なc-Fos免疫染色による神経活動マッピングによって明らかにしたフェンサイクリジン(PCP)を慢性投与したマウス(PCP慢性投与マウス)のワーキングメモリー障害とその障害に関わる前辺縁皮質や背内側線条体など複数の脳領域における神経回路網を解析するため、順行性及び逆行性神経トレーサーを用いてマッピングし、神経入出力を明らかにした。次に、特定の脳領域や神経回路でin vivoカルシウムイメージングを行うため、グルタミン酸作動性神経特異的に蛍光カルシウムセンサータンパク質GCaMP6fを発現させるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターとCre依存的にGCaMP6fを発現させる逆行性AAVベクターなどの作成を行った。次に、PCP慢性投与マウスに加えて、統合失調症のモデルマウスとしてヒト22q11.2微小欠失症候群マウスの導入を実施した。さらに、マウスにおいて遅延非場所合わせ試験によるワーキングメモリーの評価を高効率かつ高精度化するため、ノーズポークのオペラントチャンバーを用いた行動課題の自動化を構築した。
2: おおむね順調に進展している
予定した実験を進めており、順調に進展している。
今後は構築したこれらの実験系を用い、PCP慢性投与マウスのワーキングメモリー障害に関わる神経回路を明らかにしていくとともに、ヒト22q11.2微小欠失症候群マウスにおいても同様の検討を行う。
平成30年度の予算として大きな割合を占めるものとして、トランスジェニックマウスの導入があったが、納品が年度末になったため予算の支出は次年度になった分、次年度使用額が生じた。
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