研究実績の概要 |
ポジトロンCT(Positorn Emission Tomography:PET)は、生体内での神経伝達物質の評価が可能であるが、これまでセロトニン1B受容体に関しては、PET検査に用いる適切な放射性薬剤が無かったことから、うつ病の病態解明には至っていない。近年開発されたPET用放射性薬剤[11C]AZ10419369は、セロトニン1B受容体に高い親和性と選択性を有した薬剤である。カロリンスカ研究所のTigerらは、[11C]AZ10419369研究の第一人者であり、これまで[11C]AZ10419369を用いた臨床研究を行っている。健常者における抗うつ薬内服後のセロトニン1B受容体の密度の検討(Nord et al, 2013)や数少ない[11C]AZ10419369を用いたうつ病患者に対する研究も行っており、うつ病患者への認知行動療法前後で脳幹部背側のセロトニン1B受容体結合能が33%減少した(Tiger et al, 2014)との報告や、再発したうつ病群と健常対象群との比較において前帯状皮質でのセロトニン1B受容体結合能が25%低い(Tiger et al, 2016)との研究報告を行っている。現在日本医科大学においてTiger氏は[11C]AZ10419369研究の指導しており、共同で研究を行っている。セロトニン1B受容体のうつ病における生体内の役割についての知見は未だ少なく、うつ病の病態解明には至っていない。また、認知行動療法以外の治療前後における報告はない。今回、様々な病期のうつ病患者のセロトニン1B受容体の評価比較、検討することにより、うつ病の病態および治療におけるセロトニン1B受容体の役割を明らかにすることを目的とした。 年齢や性別をマッチさせたうつ病治療中で寛解している患者12名、難治性のうつ病患者12名及び健常対象群12名に対し[11C]AZ10419369PET、MRI検査を行い、うつ病患者群にはうつ病評価尺度による心理学的評価を実施した。また、少数例であるが初発のうつ病患者のデータもとることが出来た。それぞれのデータについては現在解析中である。
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