研究課題
クロザピンによる効果と副作用を評価するための検体作製と解析条件を最適化するための調製方法の検討を実施した。6週齢のマウス(ICR)にフェンシクリジン(PCP)10 mg/kgまたは生理食塩液(SAL)を14日間皮下投与し、クロザピン(CLZ)10または30 mg/kg、または溶媒(Veh)を7日間経口投与した。マウスより脳(前頭前皮質、側坐核、線条体、扁桃体、海馬)および末梢組織・臓器(血液、脂肪、肝臓、膵臓、胆嚢、心臓、腎臓)を採取し、検体とした。クロザピン結合磁性ビーズを調製し、磁性ビーズに海馬ライセートを反応させて、結合タンパク質を確認した。側坐核、線条体、海馬よりタンパク質を抽出・精製し、質量分析を実施した。クロザピン結合磁性ビーズの調製においては、精製時に遊離するN-ヒドロキシスクシンイミドを高速液体クロマトグラフィーにより定量し、クロザピンの用量依存的に固定化量が多くなることが確認された。磁性ビーズと海馬ライセートの反応物を電気泳動し、クマシーブリリアントブルー(CBB)染色にて確認したところ、バンドは認められず明らかなクロザピン結合分子は同定されなかった。質量分析においては、PCPやCLZの作用に共通するパスウェイとして、側坐核では神経精神疾患、線条体ではプロテアソーム、海馬ではシナプスに関わるパスウェイが同定された。PCP特異的な作用には、側坐核や線条体では物質依存、海馬では長期抑制など、CLZ特異的な作用には、側坐核では心筋炎や心筋細胞、線条体ではイノシトールリン酸代謝、海馬ではErbBシグナリングや神経栄養因子に関わるパスウェイが同定された。統合失調症の病態、CLZの治療効果や副作用に関連すると示唆される。
平成31年4月22日にプレスリリースを配信した。https://www.amed.go.jp/news/release_20190422.html
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