研究課題
行動学的解析により、IL-18欠損マウスは野生型と比較し、記銘力障害や意欲低下などの抑うつ様行動変化を呈した。形態学的解析によるとIL-18欠損マウスの海馬は光学顕微鏡下では変化を認めなかった。しかし、電子顕微鏡では海馬の歯状回の神経終末のミトコンドリアに変性を認めた。神経再生(neurogenesis)に関しては神経再生が抑制されているという結果となった。分子生物学的解析を行った。まず、マイクロアレイの機能解析によれば、うつ病や認知症と関連している遺伝子変化を捕らえた。また、アポトーシスに関する遺伝子が多数変化していた。形態的な変化で観察されたミトコンドリアに関するタンパクの発現に差が見られなかった。さらに、Authophagyに関連する遺伝子のタンパクの発現にも差が認められなかった。アポトーシスに関連する遺伝子では、アポトーシス誘導のタンパクより、アポトーシス抑制因子のタンパクの発現がIL-18欠損マウスにて抑制されており、アポトーシスを誘導する方向へ動いていることが判明した。しかしながら、IL-18欠損マウス、野生型マウスの海馬におけるアポトーシスをTUNEL法を用いて観察したところ、いずれもアポトーシス陽性細胞は認めなかった。これらから、IL-18はアポトーシスのいずれかのシグナル、もしくは実行に必要不可欠であるという可能性が示唆された。組み換えIL-18の脳室内投与について現在実験を進行している。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の予定では平成29年度は行動学的解析と病態の構成概念妥当性を中心に解析を行う予定であったが、計画通り実験が進行したため、平成30年度の実験計画であった病態の構成概念妥当性についての分子生物学的解析についても実験、解析が終了した。現在、平成30年度の実験計画の予後妥当性を中心に組み換えIL-18の脳室内投与による治療効果判定を実験中である。
上記にも記載のように当初の実験計画以上に進展している。実験計画に記載のとおり、主に引き続き病態の構成概念妥当性と予後妥当性を中心に解析を行う。なお、解析にあたり、必要な点として再現性の確認であるが、これは上記実験と並行して再現実験を行い、再現性の確認も行う。実験が終了すれば、引き続き学会発表だけでなく、論文での発表を執り行う。
平成29年度は、動物実験にかかる費用や消耗品の費用を既に所持していたストックより使用した為、使用費用が少なかった。平成30年度に動物実験維持費、系統維持費、消耗品や脳室内投与、それらの実験に伴う人件費などを使用する予定である。
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