研究実績の概要 |
大うつ病患者の3割は薬物療法を行っても効果が不十分な治療抵抗性うつ病である。電気痙攣療法は治療抵抗性うつ病でも約7割の患者で効果が得られる有効性の高い治療法である。治療抵抗性うつ病では唯一の寛解が望める治療法であるがその抗うつ効果メカニズムについては明らかとなっていない。薬物療法によって改善を得られない治療抵抗性うつ病患者とモノアミンをターゲットととする抗うつ薬で完全に寛解を得られるうつ病患者ではそもそも病態は異なっている可能性があるが、いずれも明確な病態メカニズムが明らかとなっておらず、うつ病治療において科学的根拠に基づく治療選択がなされていないという課題を抱えている。 治療前後の電気痙攣療法による脳構造、白質の異方性、ミエリンマップによる再髄鞘化の検討を行い、電気痙攣療法の抗うつ効果についての検討を行う。また、電気痙攣療法が有効であった治療抵抗性うつ病と無効であった治療抵抗性うつ病の電気痙攣療法前の脳画像や臨床症状特徴、患者背景の差異を検討を行う。 電気痙攣療法の症例は30例エントリーし、治療前後の脳画像撮像を行うことができた症例について解析を行った。ミエリンマップでは先行研究から得られている電気痙攣療法治療前後による白質変化部位を重点的に検討を行ったが、ミエリン量の有意な変化は得られなかった。また海馬の亜区域の検討を行っており、抗うつ薬で改善が得られた群の抗うつ薬治療前後の変化領域は左の歯状回やCA3, CA4であり、同様の手法で、電気痙攣療法治療前後の海馬の亜区域の変化領域、また白質の異方性についても解析を行い、差異を明らかにする。
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