研究課題/領域番号 |
17K16410
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
福嶋 翔 独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター(臨床研究部), 臨床研究部, 医師 (00727000)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳機能画像 / アルコール使用障害患者 / 左後帯状回、左楔前部 |
研究実績の概要 |
申請者らは、アルコール使用障害(AUD)患者における脳内報酬系の機能ならびに画像上の変化を明らかにするために、機能的MRIを用いてAUD患者を健常者と比較した脳機能画像研究を行っている。具体的には飲酒欲求を惹起するような視覚的刺激を呈示し、Blood Oxygen Level Dependent (BOLD)信号の変化を調べた。画像解析にはMATLABおよびSPM12を用いた。 AUD重度患者24人(AUD群)および健常者15人(NC群)に機能的MRIを撮像し、得られたBOLD信号を、反復測定分散分析を用いて集団解析を行ったところ、左後部帯状回(Posterior cingulate gyrus:PCC)や右PCC、左楔前部において相互効果を認めた。それらの部位を関心領域として二群間比較を行ったところ、左PCCおよび左楔前部において、“ジュースを飲んでいる画像”に対するAUD群の反応は、NC群と比較して有意に低かった(p = 0.044, p = 0.036)。また、左PCCにおいて、“酒を飲んでいる画像”に対するAUD群の反応は、NC群と比較して有意に高かった(p = 0.044) 以上の結果より、今回の刺激画像に対しAUD患者は左PCCおよび左楔前部における神経活動の機能異常が示唆された。またこのことからAUD重度患者は健常者と比較して、アルコール飲料へ過剰反応する可能性を考えた。 またこれらについて、第52回アルコール・アディクション学会総会(パシフィコ横浜、神奈川県)およびSfN annual meeting 2017(Walter E. Washington Convention Center, Washington, USA)で学会発表し、他の参加者と活発な意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究施設での研究体制作り、被験者の募集、撮影およびデータの解析など、少しづつではあるが、おおむね順調に進展している。また、本研究の主要評価項目である、集団解析による二群間の交互作用の確認やその脳部位の同定も行えた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のサブ解析で「右PCCにおける、“酒を飲んでいる画像”に対する反応が、二群間で統計学的に異なる」ことを認めた。今後は、その結果に対する考察を進める。また、BOLD反応と他因子の関連性の相関関係などについても解析を進める。 また、これらの結果や考察をまとめ、2018年度はさらなる学会発表を行い、他の研究者と意見交換をし、海外の専門誌への論文投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
自己研鑽および研究発表のために研修会や学会参加などを積極的に行った一方で、被験者のリクルートなどがスムーズに進んだため人件費があまりかからなかったため、請求した助成金と使用額に差が生じた。 次年度は、研究およびデータ蓄積の継続のために助成金を使用する予定であると同時に、自己研鑽および研究発表のために研修会や学会参加などへの参加を予定している。また、論文作成及び海外の専門誌への投稿を目指すが、そのために論文作成に関する専門書や英文校正の依頼などで助成金を使用する予定である。
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