研究課題/領域番号 |
17K16412
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 健太郎 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (70756311)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PET / Texture解析 / 低酸素 / FDG / FMISO / 神経膠腫 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、原発性脳腫瘍の臨床において、糖代謝を画像化するF-18 fluorodeoxyglucose(FDG)および低酸素を画像化するF-18 fluoromisonidazole (FMISO)を用いたポジトロン断層撮影法(PET)により、新たな診断法を構築することである。本研究では近年注目されているTexture解析の手法を用いたFDG PETの情報からFMISO PETの低酸素情報を予測できるかどうかを検討し、ごく一部の施設でしか施行できないFMISO PETに対して、FDG PETが代替手段となり得るかを明らかにする。従来、一般的に用いられていたPETの指標はSUVmax(maximum of standardized uptake value)であり、腫瘍内のごく限られた部位の集積度を反映するのみであったが、Texture解析では腫瘍内の分布の不均一性を数値化することができる。初年度の実績としては、北海道大学病院で2015年3月以前にFDG PETおよびFMISO PETを撮像された悪性神経膠腫53例のうち、単一のPET機器で撮像された26症例で検討を行った。その結果、36種類のTextureの指標のうち、21種類が、FMISO集積の有無、すなわち低酸素のある群とない群との間に有意差を示し、FDG PET画像から低酸素の有無を予測できる可能性が示された。一方で従来の指標であるSUVmax値や単純な集積体積を示すMTV(metabolic tumor volume)は有意差を示さなかった。この結果を2018年6月に開催される米国核医学会(Society of Nuclear Medicine and Molecular Imaging)に演題登録し、採択された。また、2017年度に新たにエントリーされ、FDG PETおよびFMISO PETを撮像し、手術および病理診断を行った症例は7例であった。これらの症例については未解析である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存の26症例での検討でFDG PETのTexture解析が低酸素を予測しうることを示した。2017年度に新たにエントリーされ、PET検査を施行した症例は7例であった。また、2017年3月以前に蓄積された症例未解析のものが30例程度あり、現段階では全体で60例以上蓄積されたことになる。これらの症例についても解析を行う予定であり、症例蓄積は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現段階では単一のPET画像のみを対象としており、撮像機器がTextureの指標にどの程度影響を及ぼすか、再現性の高い指標はどのようなものかは明らかにされていない。北海道大学病院では3つのPET装置を用いて検査を行っており、機器間の影響については検討可能と考えられる。さらに神経膠腫の診断においては不可欠となっている遺伝子解析の結果、および生命予後との比較検討を行う。またTexture解析の他に、サポートベクターマシンや深層学習などの手法を用いて数理学的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年は他の前向き臨床試験によりFMISO PETを施行できない期間が4ヶ月程度あり、FMISO PETを施行可能だった症例が7例と、当初の目標であった年間20症例を下回った。次年度は目標症例に達する見込みである。また同時に施行するFDG PETについても費用を用いる。病理組織検体については検査未完の症例が含まれるのでこれを完遂する予定である。当該年度は国内・海外学会での発表を行わなかったが、次年度では計画していた国内学会および米国核医学会に加え、ヨーロッパ核医学会での発表を行うことも計画している。
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