研究課題/領域番号 |
17K16414
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鎌田 裕基 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (00789836)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | MRI / CFD / 正常圧水頭症 / 脳脊髄液 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、無侵襲な画像診断法であるMRIを用いて流体解析を行い、脳脊髄液の動態生理と正常圧水頭症の病態を解明することである。平成29年度は、研究の根幹となる3D cine PC (Phase Contrast) MRIによる生理流体の解析手法の構築を行った。脳脊髄液を対象とした頭部の3D cine PC MRIを撮像したところ、脳室間での脳脊髄液の流速を計測できたが、脳室内で緩徐に流れる脳脊髄液を適切に評価することが困難であった。そこで、大血管(大動脈や肺動脈)における血流を解析対象とした。得られた成果は以下のとおりである。 ① 3D cine PC MRIを用いた生理流体の解析手法の構築 3D cine PC MRIの信号強度から対象とする流路の生理流体の速度を抽出し、流れの可視化を行った。得られた流速データから、流量、ヘリシティ、エネルギー損失などの流体力学的な指標を用いて定量的な評価を行った。大動脈弁狭窄症や肺高血症などの大血管疾患を対象として血流解析を行い、治療後に異常な血流が改善し、正常の血流に近づくことを観察した。さらに、治療後には、末梢組織への効率的な血液供給が得られることを定量的に確認した。 ② 3D cine PC MRIを元にした数値流体シミュレーション手法の構築 3D cine PC MRIから流路の形状を抽出し、得られた流速を境界条件として設定し、格子ボルツマン法を用いた数値流体シミュレーションを行った。大血管流れにおいて、3D cine PC MRIの計測とシミュレーションの結果が定性的に一致することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、MRIによる生理流体の解析のための手法や数値流体シミュレーションの手法を構築できた。 一方、頭部を対象とした3D cine PC MRIでは、脳室間で脳脊髄液の流れを計測できたが、脳室内では緩徐な脳脊髄液流れを評価することが困難であった。脳室内の脳脊髄液の動態を検討するためには、MRIと数値流体シミュレーションとを相補的に用いる必要がある。MRIで計測可能な脳室間の流速を境界条件として設定し、脳室の形状モデルを用いて数値流体シミュレーションを行う必要があり、当初計画よりも遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、数値流体シミュレーションを脳室内の脳脊髄液流れに適応できるように調整中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については、大規模な流体シミュレーションを行うためのワークステーションの購入が必要なかったため。次年度に購入予定である。 旅費については、研究に関する国際会議に参加するための海外出張がなかったため。次年度に、研究と関連する海外での国際会議に参加する予定である。
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