研究実績の概要 |
神経膠腫の画像診断は現時点では十分ではなく、遺伝子変異に基づいた病理診断に則した術前の画像診断が求められている。WHO gradeII-IVの計47例で、MRIでの緩和の一つであるT1rhoを用いて術前診断の可能性について検討した。腫瘍の充実部にROIを置いたT1rho値(mean, minmum, maximum, median)を測定して、病理診断での免疫組織化学染色(IDH-1、Ki67、ATRX)、WHO grade、病理診断名、1p19q co-deletionの遺伝子異常との相関を統計学的に検討した。現時点ではgradeIVの腫瘍においてIDH-1とATRXの染色性は全てのT1rho値(mean, minmum, maximum, median)と有意な相関が確認できた。また、gradeIIIとIVの腫瘍において、IDH-1の染色性はmaximum T1rho値と、ATRXの染色性はmeanとmaximum T1rho値との有意な相関が見られた。以上のことから、術前のMRI検査で悪性神経膠腫が疑われた時、IDH-1遺伝子の変異を予測することが期待でき、患者の予後予測にT1rho測定が有用である可能性が示唆された。ただし、この他の免疫組織化学染色(Ki67)やWHO grade、病理診断名、1p19q co-deletionについては相関が得られなかった。 また、T1rhoはT2と類似しているが異なる緩和であることから、この微細な差異を評価することはT1rhoそのものよりも意義があると推測している。T2との逆数の差(delta R1rho)を得る方法を確立しつつあり、これらを利用することによって術前画像診断の精度をあげるために引き続き検討を行っている。
|