研究課題/領域番号 |
17K16418
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
関野 雄太 筑波大学, 附属病院, 医員 (50795713)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 温熱療法(ハイパーサーミア) / オンコサーミア / 間欠的低酸素 / 放射線治療 / 陽子線治療 |
研究実績の概要 |
温熱療法は熱エネルギーを利用して腫瘍を破壊する治療法であり、放射線や抗がん剤に抵抗性を示す低酸素細胞に対しても有効性を示すことが知られている。本研究では、腫瘍内微小環境において治療抵抗性、再発、転移の原因となることが知られる間欠的酸素環境をin vitro実験下で構築し、放射線および温熱に対する抵抗性について明らかにし、その克服法について提言することを目的とする。ヒト扁平上皮癌由来SAS細胞をマルチガスインキュベーターによる酸素分圧21%と1%環境下で繰り返し培養することで、間欠的低酸素環境を最大で20回経験させた。Cyclic hypoxia経験細胞(Cyclic hypoxia experiences cells: CHEC)はX線および温熱(恒温槽による加温)に対し、大気中酸素分圧環境下で培養した細胞に比べ顕著な抵抗性を示した。CHECのエネルギー代謝経路を調べた結果、TCAサイクルに関与するミトコンドリアの量および膜電位が顕著に減少し、一方で嫌気的解糖系に関わるグルコース摂取量と乳酸排出量が上昇していた。この結果から、CHCEはより嫌気的解糖系への依存度が高まり、ROS等への抵抗性が高まっていることが示唆された。ついで、これらの細胞に対して恒温槽(water bass: WB)による加温と新規低出力加温療法オンコサーミア(Oncothermia: OT)による加温を行なった結果、WBに比べOTは30-120 minの加温処理において1.2倍ー20倍の殺細胞効果を示した。さらに、X線との併用においてもWBによる42℃加温では顕著な増感効果を示さなかった(温熱増感比TER=1.06)のに対し、OTによる42℃加温では顕著な増感効果を示した(TER=1.61)。今後は、間欠的低酸素細胞を標的としたより効率的な治療法について、薬剤や陽子線を用いて解析を進めて行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cyclic hypoxia経験細胞はX線および温熱に対し、大気中酸素分圧環境下で培養した細胞に比べ顕著な抵抗性を示すことを確認することができ、加温によりX線治療の増感効果を確認することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
間欠的低酸素細胞を標的としたより効率的な治療法について、薬剤や陽子線を用いて解析を進めて行く。
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