前年度までに、ウォーターバス(WB)による加温と比べ、新規低出力温熱療法オンコサーミア(OT)を用いることで、より低温度(41度程度から)で効率的に殺細胞効果、抗腫瘍効果及びX線増感効果を誘導することを明らかにしてきた。今年度は、X線に加え筑波大学が有する先端放射線治療である陽子線を用いて、オンコサーミアとの併用による殺細胞効果を検討した。その結果、X線を用いた場合とほぼ同様に陽子線との併用においてもWB加温に比べより効率的に細胞致死を誘導し、大きな温熱増感比(Thermal Enhancement Ratio:TER)を示すことが明らかとなった。また、WB 41度によるTERはX線と陽子線に対しそれぞれ1.15±0.07、1.19±0.06と両者間で有意差はなかったが、OT 41度によるTERはX線と陽子線に対しそれぞれ2.28±0.06、2.50±0.1と陽子線に対し顕著に高いことが明らかとなった。さらに、OTによる殺細胞効果の分子メカニズムを探るため、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行った結果、細胞周期(G2期)停止の誘導、アポトーシス誘導、オートファジー誘導に関わる遺伝子群が、WB処理群に比べOT処理群で有意に亢進し、またその発現時間がWBに比べOT群でより早期に起こることが明らかとなった。
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