がん治療における放射線療法では、腫瘍縮小効果を期待して抗癌剤との併用療法が行なわれている。当施設に置いても子宮頸癌および手術不能な膵臓癌に対して局所制御や根治的治療を目的として化学放射線治療が実施されている。ヒトの子宮頸癌ではシスプラチン(CDDP)が頻用され、放射線治療と併用されている。 放射線照射と抗癌剤の同時併用で明らかな治療効果が得られるが、治療を継続するために障害となるのが嘔吐や悪心などの副作用の発現である。制吐剤が投与されても症状の改善が認められない患者にとっては、治療の継続が困難である。そこで当施設では投与総量と抗腫瘍効果が相関し、血中濃度に依存して副作用が発現するCDDPに注目した。すなわち放射線照射との併用による治療効果を維持し、副作用を軽減するCDDPの低用量(8mg/m2)の連日投与を実施した。この方法では、積算CDDP量が十分量投与可能であること、副作用が軽減され治療成績が週1回のCDDP投与(40mg/m2 )と比較して同等であり、これらの症例は臨床治療成績として当施設より報告されている。 本研究では、腫瘍細胞レベル(子宮頸癌細胞:HeLa-S3)における低濃度CDDPと照射線量の効果関係について、短期間の効果として腫瘍細胞のDNA合成阻害について対するin vitroの検討、およびヌードマウスに移植したHeLa-S3腫瘍細胞の放射線照射と抗癌剤併用による抗腫瘍効果のin vivoの検討を実施した。 本研究結果では、in vitro の検討にて算出した照射線量とCDDP濃度から、最低照射線量6Gy x 3回(18Gy)および2.5μg/kg (ヒト:10mg/m2に相当)の6回投与から有意な腫瘍の縮小効果が認められた。今後、さらに臨床に寄与でき得る詳細な基礎的実験を継続したいと考えている。
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