研究課題/領域番号 |
17K16427
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大熊 加恵 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00631136)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 皮膚悪性リンパ腫 / 全身皮膚照射 / IMRT |
研究実績の概要 |
皮膚悪性リンパ腫に対する全身皮膚照射は有効な治療法である一方、患者の負担が大きく、均一に照射できないという課題が長年にわたり残されている。当研究者は、その解決法として強度変調放射線治療(intensity modulated radiotherapy : IMRT)を用いた全身皮膚照射の臨床試験を開始している。理論的には、負担の少ない仰臥位で、ターゲットに均一な照射が実現できる手法である。しかし、実際には体型によっては均一な線量分布の治療計画を立てられないといった、想定外の問題が生じている。また、日々の位置ずれを考慮するためのマージン設定の大きさも不確定であり、本格的な実用化を目指すには課題が多い。本研究では、IMRTを用いた全身皮膚照射の問題点を解決し、新たな治療法として確立することを目的とした。 今年度は、当施設内にある匿名化した全身CT画像のうち、体格の異なる複数の画像を用いて治療計画を行い、線量分布にどういった違いが生じるのかを確認した。頭部・体幹部・四肢など、照射する部位による線量分布の均一性には相違があったが、特に体幹部については症例ごとに分布の均一化が異なる結果であった。体幹部および下肢といった形状の大きく異る部位を同時に照射することについては、内部線量を低下させることが困難であった。ただし、内部線量を処方線量の8%程度に抑えることは可能であった。 治療時にはガラス線量計を用いて頭頂部・顔面・腋窩・体幹部・四肢などの実測を行い、治療計画上の線量分布と実測値が一致するか確認した。治療計画上の線量分布と、実測値との比較も行い、誤差は3%以内に収まった。計画に要する時間、各臓器の線量、実際の治療における位置精度についても測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究は、ほぼ当初の計画通りに進められている。特に、実際の治療患者に対するガラス線量計での測定ができたため、治療計画どおりに治療が行われていることが示されたことは意義が大きい。実症例の線量分布については海外学会での報告も行った。ただし、ファントムによる実測ができておらず、これについては今後行っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究の2年目は、この治療を行った症例について、治療中、治療後の経過観察で治療効果を判定を行うとともに、採血などを用いて急性期有害事象を観察することとしている。また、2年目では当研究者が別の施設に所属することになった。その施設では、従来から行われている電子線を用いた全身皮膚照射が行われているため、1年目に行ったIMRTによる治療との比較が可能となった。実際の治療における線量や治療にかかる患者・医療スタッフの精神的・身体的負担、治療時間などについて比較検討も行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
もともと2年にわたって行う研究計画であったため、次年度使用額は当然生じるものである。次年度は実臨床での治療効果・副作用についてを調査した上で、研究結果をまとめて論文化する予定である。英文校正や投稿費が必要となる。また、まだ未施行のファントムを用いた線量分布の実験を行うが、この際にガラス線量計測定の費用が必要となるとともに、研究協力者への謝金が発生する。実際に測定を行う際、現在の施設内にあるファントムが適切でなかった場合には、新たにファントムを購入する必要がある。海外学会での発表も予定している。
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