皮膚悪性リンパ腫は数年から十数年を経て進行する悪性腫瘍であり、進行期では全身の皮膚をターゲットとした全身皮膚照射が有用であることが知られている。病変が皮膚表面に限局する当疾患では、放射線の到達深度が浅い電子線が用いられてきた。この治療法の問題点は以下の通りである。1.照射野が広く投与線量がバラつき易い。特に腋窩や乳房下、陰部などは影になりやすい。2.線源からの距離をとり、様々な体位とするなど線量を均一にする工夫が行われるが2)、治療計画装置で線量分布を描くことは実質不可能である。3.治療は全身脱衣で1時間程度を要するため、患者の身体的・精神的苦痛が大きい。4.治療中の患者の固定が困難であり、治療中に数cm単位で体位がずれる可能性がある。これらは治療効果の不確実性につながるため、改善が望まれてきた。 申請者は、その解決法として強度変調放射線治療(intensity modulated radiotherapy : IMRT)を用いた全身皮膚照射の臨床試験を行った。理論的には、負担の少ない仰臥位で、ターゲットに均一な照射が実現できる手法である。本研究では、IMRTを用いた全身皮膚照射の問題点を解決し、新たな治療法として確立することを目的とした。 治療計画上の線量分布と、実測値との比較を行い、計画に要する時間、線量、実際の治療における位置精度について測定を行った。さらに治療効果と急性期有害事象、患者のQOLを検討し、全身皮膚照射をIMRTで行うことの妥当性を検討した。
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