研究課題/領域番号 |
17K16429
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 渉 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50755668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射線治療 |
研究実績の概要 |
初年度は過去の症例データを用いて、ラディオミクスによるバイオマーカー同定システムの確立を目指した。対象はWHO grade 2, 3, 4と診断さた神経膠腫とし、東京大学医学部附属病院で加療された症例を対象として研究を進めた。 研究の第一段階として、過去の神経膠腫症例について集積を行った。当院ですでに遺伝子変異が同定された症例について、治療や予後を含めたデータベースを作成した。これについては現在多施設での倫理委員会に申請中であり、今後より多くの症例を含む大規模データベースへの発展を見込んでいる。 これまでにデータベースに登録できた症例について、治療経過中に撮像されたMRI画像を用いて、腫瘍の局在や形状を同定するセグメンテーション作業を行った。個々の症例のもつ定量的な画像特徴量を抽出し、先行研究を参考にして本研究に最適なラディオミクスの手法を選択した。多くの症例から得られる膨大な特徴量の情報を用いて、最適な予測ができるよう機械学習の手法を用いて解析を行った。これにより、神経膠腫のWHO gradingやそれらに特異的な遺伝子変異を画像特徴量から予測できることがわかった。これまで生検や手術検体を用いて保険診療外の解析を加えることでしかわかり得なかった臨床情報が非侵襲的に得られる方法が確立されつつある。 以上の結果について2018年度開催の複数学会での発表が予定されている。またそれらの結果については英文誌への投稿準備が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に書かれた年度予定におおむね沿う形で研究が進んでいるため順調な進展といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で導入したラディオミクス手法について追加で登録される症例のデータなどを用いて精度検証 を行う予定である。画像特徴量から推測されるバイオマーカーが、凍結検体から得られた既知のバイオマーカーと合致することを確認する。もし両者に関連性がみられなかった場合には原因の追求も行う。この段階で本研究のシステムにある一定の精度が保証されれば、以降は医用画像のみから治療後の転帰・予後が予測可能となることが期待できる。 また、本研究で確立する手法を応用して、新規症例についても、さまざま画像特徴量と臨床経過の情報収集を継続し、その関連性を解析する。将来的に症例が蓄積され、情報量が十分に多くなることで、今後新たな画像的バイオマーカーが同定されることも期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
実際の研究を進めていく中で、解析装置や参加学会などについて、申請時点に見込んでいた内容とは異なる部分が生じたために次年度使用額が生じた。これは最終年度使用額として、研究継続に必要な物品購入費および学会参加費、国際誌への投稿料として使用する予定である。
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