本研究の目的は,コンピュータ断層撮影(computed tomography: CT)装置の解像度を飛躍的に改善するため,近接ジオメトリと高精細検出器を既存のCT装置に搭載した新たなコンセプトの超高解像度CTシステムの基礎的技術を開発することである. 昨年度までの研究によって,提案する近接ジオメトリ型高解像度CTの基礎技術が確立された.これは,高精細CMOS型検出器を既存のCT装置の検出上に構築し,被写体と検出器を近づける技術であり,汎用型CTの利点を活かしつつ,顕著な高解像度化を実現することができる.また,この研究に関連し,最新の汎用型CT装置における高解像度撮像との比較検討も行ったが,本システムは明らかに優れた特性を示していた. 最終年度には,健常ボランティアについて撮像を行うため,CT検査における被ばく線量測定および画像処理の調整を行った.その後,当施設の倫理委員会の承認を得て,安全性を担保した上で被験者2名の撮像を行った.その結果,骨梁構造の変化を十分に描出できるほどの画質があり,臨床的有用性を見出せる可能性があることを整形外科医師とともに確認した.また,模擬人体の評価では分からなかった靭帯や腱・軟部組織の描出も良好であった. さらに,ここまでの研究成果をとりまとめ,国内および国際学会での発表を行った.四肢専用CTの技術開発を行っている研究者とも意見交換し,今後の発展やニーズについて意見交換することができた.撮像範囲が限られることや画質改善のためのシステム改良など,今後の課題があるものの,近接ジオメトリ型高解像度CTシステムの実現可能性を示すことができた.論文投稿については現在準備中である.
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