研究実績の概要 |
局所進行切除不能食道癌は難治癌である。標準治療は化学放射線療法だが80%の患者は放射線治療の照射野内に再発する。そのため放射線治療照射野内の局所制御向上が本疾患の治療成績改善に必須である。腫瘍に投与した放射線線量とその生物学的効果(腫瘍制御)には正の相関があり、標的病変(癌病巣)への放射線線量を増加させ、放射線治療照射野内の局所制御向上を図る試みが食道癌に実施されてきた。ただし現在の標準的照射方法を用いて標的病変へ線量増加を行うと、標的病変周囲の正常臓器にも高い線量が投与され、線量増加に伴う毒性増加は避けられない。ただし強度変調放射線治療という新しい照射技術を利用することで、安全に線量増加できることが臨床前研究で報告されている。強度変調放射線治療を利用した化学放射線療法を行い、至適放射線線量を決定し、有効性・安全性を評価することが本研究の目的である。研究計画に基づき、患者登録、試験治療を実施した。具体的には適格基準(局所進行切除不能食道癌、Performance status 0-1、20-75才)を満たす試験参加同意患者に対し、試験治療 [強度変調放射線治療を利用した化学放射線療法1回2.2-2.3 Gy 計 66-69 Gy,シスプラチン 70 mg/m2 (days 1,29), 5-FU 700 mg/m2 (days 1-4,29-32)]を実施し、試験治療開始後90日以内の用量規定毒性発生数を測定した(本研究の用量規定毒性は『食道炎Grade 3、 放射線肺臓炎Grade 2、伝導障害/心嚢液貯留/心膜炎/急性冠動脈症候群Grade 2、放射線治療が60日以内に終了できない場合』と定めた)。放射線線量の増加方法は第I相臨床試験で採用される3+3デザインを利用し、本対象に強度変調放射線治療を利用した化学放射線療法の最大耐容線量を推定、推奨放射線線量を決定した。
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