研究課題/領域番号 |
17K16437
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
八木 雅史 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (40737491)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 粒子線治療 / 炭素線生物学的効果 / 医学物理(学) |
研究実績の概要 |
炭素線治療では炭素線の体内線量分布を見積もるためにX線に対する生物学的効果を加味した線量分布計算が行われる。しかし、炭素線の生物学的効果は腫瘍の種類によって異なることが示唆されている。本研究により炭素線の生物学的効果の腫瘍・組織特異性の基礎データを取得し、これまでに十分に明らかにされていない炭素線の生物学的効果の細胞種依存性を解明し、細胞種に応じた生物学的効果を考慮した炭素線線量計算に展開するための基盤となる研究を行う。本研究成果によって炭素線線量計算の不確さの減少に伴う、腫瘍制御率の向上や正常組織への副作用の低減、X線と炭素線の生物線量の正確な関連付けが可能となると期待される。 本研究計画では以下の研究項目を予定している。 ①炭素線による細胞照射系の確立 ②炭素線の生物学的効果の腫瘍細胞および正常組織細胞を用いた細胞種依存性の解明 ③各種細胞に対する炭素線の生物学的効果の決定 平成29年度は深部線量の実測結果と、モンテカルロシミュレーションで計算した各深さでの線エネルギー付与から、細胞を設置する位置を決定し、炭素線による細胞照射系を確立した。これにより、炭素線を細胞に正確に照射する系を確立できた。さらに平成29年度は6種類の肉腫系細胞と1種類の正常細胞の生物学的効果を確認した。炭素線の生物学的効果の基準とされているヒト唾液腺癌細胞と比べて、肉腫系細胞は最大45%、正常細胞は17%生物学的効果が異なっていた。これらの結果から炭素線の生物学的効果の細胞種依存性が大きく、さらに腫瘍細胞と正常細胞で生物学的効果が大きく違うということが分かった。特筆すべきはこれまで測定することが困難であった正常細胞の生物学的効果を示したことである。これにより正常組織を考慮した炭素線線量計算の実現可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に沿って研究が進捗できている。
|
今後の研究の推進方策 |
肉腫系細胞および正常細胞の生物学的効果のリピート実験、その他の正常細胞の生物学的効果を測定する実験、肉腫系細胞と正常細胞の数理モデルパラメータの導出を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた消耗品が、研究室内で調達できたため次年度使用額が生じた。今年度は照射実験回数を増やすとともに、予定通り消耗品を購入する。
|