研究実績の概要 |
今年度は、まずin vitro実験として人体を模倣したファントムを用いた検討を行った。5人の健康なボランティアから採取した血液サンプルを照射群と非照射群に分けてシリンジに封入した。照射群はそれぞれ2サンプルずつ用意し、低線量CTによる撮影とポジティブコントロールとしての通常線量CTによる撮影を行った。撮影直後にリンパ球を分離・固定した後に、抗γ-H2AX抗体を用いた免疫染色を行いγ-H2AX foci数のカウントを行った。なおファントムはヒトの体幹部を模倣した楕円形(35×21×10cm)で、5.0%のゼラチンを満たし(CT値約40HU)、外壁はアクリル樹脂(厚さ8mm)を用いた。ファントムのCT撮影は320列CT(Aquilion One, Toshiba Medical Systems)を使用した。その結果、非照射群と比較して通常線量CT照射群ではγ-H2AX foci数の有意な増加を認め(Δ0.256/cell, p=0.039)、低線量CT照射群では有意な増加は見られなかった(Δ0.013/cell, p=0.94)。 次にin vivo実験として、2017年4月より2018年3月現在まで肺がんの精査のため胸部CTを行った患者80名を対象として低線量CT(1.5mSv)の撮影前後に採血を行い、得られた血液においてリンパ球を分離・培養し、γ-H2AX foci数および染色体異常数を計測してDNA損傷の定量を行った。結果については現在解析中である。
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