研究課題/領域番号 |
17K16450
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
則兼 敬志 香川大学, 医学部, 助教 (90623223)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | サルコイドーシス / PET |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、心サルコイドーシスの診断・治療効果判定・重症度の層別化などにおいて18F-fluorothymidine(18F-FLT)を用いたポジトロン断層撮影法(PET)の有用性を検討するとともに、既存の18F-fluorodeoxyglucose (18F-FDG) PETとも比較検討することである。 サルコイドーシスと診断され胸部のFDG PET、FLT PETを施行された20症例を対象とし後方視的に検討した。PET検査の前処置としてFDG投与時は18時間以上の絶食を行ったが、FLT投与時は特別な前処置は行わなかった。評価方法として、視覚的に集積の有無及びパターン、半定量的方法としてmaximal standardized uptake value (SUVmax)を用いた。結果は、2症例が心臓のみ、7症例が心外病変のみ、残りの11症例が心臓と心外病変を認めた。生理的集積の抑制不良などで、FDG PETでは20例中4例で評価困難であったのに対し、FLT PETは全例で評価が可能であった。心サルコイドーシスの診断におけるFDG PETの感度は85%、特異度は100%、正診率は90%、FLT PETはそれぞれ92%、100%、95%で遜色ない結果であった。平均SUVmax(± SD)はFDG PETが8.45 ± 3.50で、FLT PETの3.14 ± 0.89より有意に高かった(p < 0.005)。心外病変は全てFDG PET、FLT PETで描出された。本検討の結果より、FLT PETはFDG PETと同等の検出率を有す検査であることが示唆された。集積の程度はFLT PETはFDG PETには劣るものの、生理的集積がなく前処置が不要である点を考慮すると有用との結論が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究の重要な検討項目は、1:肉芽腫性病変検出における18F-FLT PET検査の優位性、2:疾患の重症度評価における18F-FLT PET検査の有用性、3:ステロイド剤などの治療前後における効果判定における有用性の3つである。本年度で得られた結果は、FLT PET検査が、現在画像検査として最も検出感度が高いと言われているFDG PET検査と同程度の診断能を有す可能性を示唆しており、さらにFDG PET検査では長時間の食事制限やヘパリン負荷などの厳格な前処置が必要であるのに対し、FLT PET検査では前処置が不要である点においては、FDG PETより有用であると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降は、更に症例を増やしてFDG PET検査・FLT PET検査を施行するとともに、前年度に得られたデータに評価方法を追加して解析する。具体的には、前年度は画像の関心領域の放射能濃度を投与量と体重で補正した半定量的指標であるSUVのみで評価したが、病変内に閾値を設定し、その閾値以上を示した領域の容積であるMetabolic activity volume(MAV)や平均SUVとMAVの積であるTotal lesion activity(TLA)などを測定し、血液検査や心エコー、心電図所見とも比較検討する。 また、前年度以前に診断されFLT PET検査を施行されている症例でステロイドなどの治療が行われた患者のフォローアップ検査を行い、治療効果判定におけるFLT PET検査の有用性についても検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 予定していた一つの学会出張を取りやめたため残が生じた。 (使用計画) 学会出張旅費に充てる。
|