研究課題
本年度は、症例の蓄積を継続しつつ、解析も行った。九州大学病院循環器内科で慢性血栓塞栓性肺高血圧(CTEPH)と診断され、心機能評価のため心臓 MRI が必要と判 断された患者群に対し、3 テスラー装置で心臓専用コイルとマルチトラスミット技術を装備した最新の MRI装置を用いて撮影を行っている。MRI画像から右心室 機能(拡張末期容積、収縮末期容積、拍出量、駆出率)、主肺動脈および左右肺動脈血流(酸素投与前後)などの計測解析を行っている。sub解析として、MRIの血流情報とカテーテルの圧情報を組み合わせることで左右肺動脈血管抵抗を算出し、バルーン肺動脈形成術(BPA)治療前後での比較を 行った。BPAを片側肺のみに施行し、両側肺血管抵抗の変化を評価することで、BPAが治療側の肺血管に与えた影 響にみならず、非治療側肺血管に与える影響も評価可能である。その結果、BPAでは治療をしていない肺血管でも血管抵抗が下がることを明らかにし、共著者と してEuroIntervention誌に投稿、採択された。CTEPHでは塞栓のない血管床でも血管抵抗が上昇し、それが治療によって改善しているということが言え、CTEPH の左右肺血管特性の一つを解明したと考えられる。また、新たなアイデアとして、バルーン肺動脈形成術(BPA)治療前後の右心房機能の検討を始めた。肺高血圧症において、右房の機能が実際の心不全症状と関連していることが過去の報告で示唆されており、治療の前後で右心房の機能を比較している。我々のグループで開発した心筋ストレインのソフトを利用して解析を行っており、オリジナリティの高い研究となっている。治療の効果判定のみならず、治療効果の出やすさや予後の判定にも用いれる可能性があることを期待している。
2: おおむね順調に進展している
CTEPHでは塞栓のない血管床でも血管抵抗が上昇しているということがわかり、左右肺血管特性の一つを解明できたと考えられる。またCTEPHではBPA後に右心房機能が改善しているということがわかり、MRIがCTEPHの評価に有用な検査であることが証明できた。これらの研究結果は臨床的意義が非常に 高く、概ね順調に進展していると考えられる。
さらなる症例の蓄積を行い、MRI単独から得られる血流情報解析や心房・心室解析によって、非侵襲的な評価法として確立することを目指す。現在進行中の検討 では、右心房の機能が大きな役割を果たしている可能性に着目し、strain法を用いた右心房の解析を追加しており、CTEPH診療における新たな指標となり得ることが期待される。
症例の蓄積が若干遅れているため、解析用のPCやワークステーションの導入がやや遅れたため。最新のシステムを使用するため、本年度のうちにそれらの導入を行う。また心臓MRIの解析ソフトウエアのバージョンアップや学会誌への投稿費用、学会発表時の旅費等にも使う予定。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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