研究課題/領域番号 |
17K16455
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
近藤 雅敏 九州大学, 大学病院, 診療放射線技師 (10568968)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エックス線 / CT / ファントム |
研究実績の概要 |
逐次近似再構成を用いたCT検査は画像ノイズが少なく,被ばく線量を低減できると期待されている.更に,低管電圧撮像を併用することで,被ばく線量の低減と画質の向上が可能との報告が多い.しかし,逐次近似再構成に適した管電圧以外の撮像パラメータは,充分検討されていないのが現状である.そこで,逐次近似再構成に最適な撮像パラメータを検討し,被ばく線量の低減と画質の向上を目指している.この研究では,投影数の多い撮像パラメータを応用し,逐次近似再構成による画像ノイズの低減効果を向上させることを立証しようと試みている. 平成30年度に臨床画像での検討を計画していたため,倫理審査の書類を作成していた.この際,他の研究者より次の課題を指摘された. 課題:当該研究では投影数が異なる撮像パラメータで撮影した画像を比較する必要があるが,比較対象が異なる投影データから画像再構成されるため,直接比較することはできない. この課題を解決するため,人体模擬ファントムによる基礎実験を行い,再構成スライス圧と再構成方法を組み合わせる新たな評価方法を考案し,課題を解決できた.具体的には,それぞれの投影データに対して①スライス厚 5 mmの逐次近似応用再構成を用いた画像,②スライス厚 1 mmの逐次近似再構成を用いた画像をそれぞれの再構成し,①に比べて②がどの程度画像ノイズを改善しているかを評価する手法である.なお,①は逐次近似応用再構成では投影データ数が異なっても,画像ノイズが変わらないことも明らかにした. 研究成果は,国際学会および国内学会で報告した.今後は,臨床画像による検討を予定通り進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次の通りファントム実験を行い,今後の臨床研究における評価方法を確立することができた. 当初,空間分解能,低コントラスト検出能,画像ノイズ等を人体とは大きく異なる一般的なCT画像の評価用ファントムで評価する予定であった.しかし,逐次近似再構成は非線形な画像再構成であり,人体と類似したファントムで評価すべきであることに着目し,人体模擬ファントムで検討することとした. 投影数の異なる2つの撮像パラメータを用いて,CTの線量指標(CT Dose Index)を3.2 mGyとし,①スライス厚 5 mmの逐次近似応用再構成を用いた画像,②スライス厚 1 mmの逐次近似再構成を用いた画像をそれぞれの投影データに対して再構成した. ファントムの肝臓部分で,定量的および視覚的な評価を行った.定量評価では,ファントムのCT値と画像ノイズ(CT値の標準偏差)を求めた.視覚評価では,スライス厚 5 mmの逐次近似応用再構成画像に対してスライス厚 1 mmの逐次近似再構成画像における画像ノイズの改善度合いを3段階で評価した. 定量評価では,投影数が多い撮像パラメータの方が画像ノイズが優位に少なく,CT値は有意差を認めなかった.この結果は,逐次近似応用再構成では投影データ数が異なっても,画像ノイズが変わらないことも明らかにした.視覚評価では,投影数が多い撮像パラメータの方が逐次近似再構成で画像ノイズの改善が優位に明らかであった. 以上の成果は,欧州放射線学会_ECR2018,および日本放射線技術学会総会_JSRT2018で報告した.今後は確立した評価方法を応用し,臨床画像による検討を予定通り進める.
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今後の研究の推進方策 |
投影数の異なる2つの撮像パラメータで撮像された腹部単純画像の連続100 例を収集し,低線量腹部単純CTのデータベースを作成する.このデータベースに対して,本年度確立した定量評価と視覚評価を実施する.この検討により,投影数が多い撮像パラメータの方が画像ノイズの改善が優位に明らかであることを臨床的に実証したい. 当初予定していた低管電圧撮像したビリスコピン点滴下CTを用いた検討は行わないこととした.理由は,当施設の他の研究者がビリスコピン点滴下CTでの別の検討を本年度実施したところ,造影剤による門脈の描出能が患者間で大きく異なり,投影数の異なる2つの撮像パラメータを用いた検討には不向きではないかとの指摘を受けたためである. 当院の日常臨床において,肝臓における転移性腫瘍において,逐次近似再構成を用いることで単純CTでの検出能が向上する症例に複数回遭遇した.このような報告は従来なく,後ろ向きの検討を予定するため撮像パラメータを変更することはできない.この事から,当該研究の目的とは直接一致していないものの,腹部単純CTにおける逐次近似再構成の応用方法として,臨床的意義は高いと考える.したがって,同検討を追加することを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたパーソナルコンピュータやUSBハードディスクを購入することができず,別品で対応したため差額が生じた.次年度でのプリンタの用紙やインク代として使用予定である.
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