研究課題/領域番号 |
17K16456
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
井手口 怜子 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (10457567)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 18-FDG-PET-CT / 大動脈 / 血管炎 / SUV max / SUV mean / TBR / IgG4関連疾患 |
研究実績の概要 |
令和元年度は血管に異常を認めない20歳代の症例をさらに追加し、全体で33症例(男性24例、女性9例)を検討した。前年度同様、早期像・後期像において上行大動脈に5箇所のregion of interest(ROI)を設定し、standardized uptake value(SUV)の最大値(SUV max)、平均値(SUV mean)を計測した。また左房と脾臓にROIを設定し、SUVのtarget (動脈)とbackground (静脈)の比であるthe target-to-background ration(TBR)を算出した。FDGの集積と生化学所見とを比較検討したところ、左房とのTBRとC-reactive protein(CRP)との間で相関関係が認められた。 また令和元年度は大動脈周囲炎としても発症し、活動性のある病変部位にFDGの強い集積を認めることが分かっているIgG4関連疾患に注目した。組織学的に診断されているIgG4関連疾患の患者13症例を検討対象患者群として新たに選択した。症例の内訳は男性8名、女性5名、平均年齢64.2歳であった。解析方法は前述の20歳代の症例と同様の方法で行った。SUV maxは早期像で中央値2.78、TBRは早期像で中央値1.42であった。 これらSUVの値と高血圧や喫煙歴、血算、生化学検査、IgG4値との関連を検討したところ、SUV maxと脾臓とのTBRでIgG4値との相関関係がみられた。 FDGの集積はIgG4関連疾患の活動性と相関があり、特にSUV maxと脾臓とのTBRが評価に有用であった。さらに今回の症例はCTでは上行大動脈に異常を認めていないことより、形態学的に異常が出現する前に18-FDG-PET-CTによる活動性の評価が可能であることが示唆された。現在はIgG4関連疾患の好発部位である腹部大動脈の評価も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は動脈硬化と血管炎に関してのみFDGの集積を測定する計画であったが、研究過程でIgG4関連疾患に対するFDGの有用性に着目し、動脈硬化・血管炎・IgG4関連疾患の3者の比較をすることが不可欠と考えた。今後、さらなる症例追加を行う必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行った血管に異常が無い症例、血管炎およびIgG4関連疾患の解析を過去にさらに遡るとともに、新規データの症例を追加する。また動脈硬化を有する症例を追加し、動脈硬化・血管炎・IgG4関連疾患において比較検討を行う。 解析部位は胸部大動脈のみでなく、腹部大動脈も追加し、最適な解析法を検出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:症例の追加を行う必要があり、時間を要しているため次年度使用が生じたものである。 使用計画:補助事業期間を延長して次年度に繰り越し、物品費として使用する計画である。
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