H29年度は既往・現病に血管炎を有する症例および血管炎の精査目的に撮像された症例を対象とし、FDGの集積を解析した。H30年度は血管に異常を認めない20歳台の症例を対象とし、令和元年度は20歳代の症例をさらに追加し、全体で33症例を解析した。またIgG4関連疾患13症例を対象患者群として新たに選択し、これらのデータをすべて総合して令和2年度に解析・検討を行った。結果は以下の通りである。 IgG4関連疾患群に対し、上行大動脈に5箇所のregion of interest(ROI)を設定し、standardized uptake value (SUV)の最大値(SUV max)、平均値(SUV mean)を計測した。また左房と脾臓にROIを設定し、SUVのtarget (動脈)とbackground (静脈)の比であるthe target-to-background ration (TBR)を算出した。 これらFDGの定量法と高血圧や喫煙歴、血算や生化学検査、IgG4値との関連を検討したところ、FDGの定量法のうち、SUV maxと脾臓とのTBRでIgG4値との相関関係がみられた。左房とのTBRでは有意差は認めなかった。 さらに左房・脾臓におけるTBRと炎症パラメーターとの相関を検討した。左房でのTBRにおける相関係数はIgG4・IgG・sIL2R・CRPは正の範囲であったが、脾臓ではいずれも負となることが判明し、脾臓の集積が炎症パラメーターと関係することが分かった。 本研究を通じて、動脈壁におけるFDGの集積は血管炎やIgG4関連疾患の活動性評価に有用であることが分かった。ただしFDGの集積は正常人でもみられ、特に後期相で強くみられることから動脈硬化や血管炎と誤診しないよう注意する必要性がある。また動脈壁のみでなく脾臓のFDGの集積が炎症の程度を反映している可能性が示唆された。
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