研究課題/領域番号 |
17K16458
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
斉藤 哲雄 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30467980)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射線治療 / リンパ球減少 / リンパ球温存 / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
T・Bリンパ球は抗原特異的な獲得免疫を担う細胞であり、腫瘍免疫において重要な役割を担っている。腫瘍免疫において、放射線治療は相反する二つの作用を持つ。リンパ球の腫瘍への攻撃に促進的に作用する一方、リンパ球数を減少させることで抑制的にも作用する。放射線治療によるリンパ球数減少を軽減する照射技術を確立することができれば、放射線治療の腫瘍免疫への促進的な効果を十分に享受することが可能となると期待される。 本年度は、食道癌への化学放射線療法を受けた症例の治療計画データを用いて、解析のためのデータ準備を行った。61例について、治療計画用CTで、脾臓、骨髄、体の輪郭描出を行った。さらに、治療中の複数の血液データのうち、最も血球数が低下した時の数値をnadirのリンパ球数とし、記録した。 上記と並行して、リンパ球と他の血球との放射線感受性の違いを解析するため、過去に当院で緩和的放射線治療を受けた症例の、放射線治療前後の白血球、好中球、血小板の変化を調べた。結果として、骨髄の線量パラメーターは血球減少の有意な予測因子ではなかった。また、総じて血球減少は軽度であった。リンパ球と比べて放射線感受性の低いこれらの血球における、放射線治療の影響の相対的な小ささを示唆するデータと考えられる。過去の私たちの研究において、低線量を用いた緩和的放射線治療後に強いリンパ球減少が多くの症例でみられており、リンパ球の放射線感受性がとりわけ高いことが考察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集、データ解析が概ね計画の通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度に、本年度のデータを用いて、臓器線量とリンパ球数・リンパ球減少の関係を解析し、リンパ球を温存するための適当な照射技術の確立を目指す。各臓器の、照射後のリンパ球減少に果たす役割を考察する。さらに、放射線治療前後のリンパ球減少の程度と生存率との間に関連があるかどうかを調べ、リンパ球減少の予後予測能力を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費、旅費等について、計画に比し、より低額で研究遂行が可能であったため。
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