MRIは軟骨形成性腫瘍の良悪性診断に有用であるが、従来の診断法では診断が困難なことは少なくない。軟骨基質に特異的な物質であるグルコサミノグリカン (GAG)は軟骨形成腫瘍の良悪性鑑別のマーカーになり得るが、GAGの画像化に基づく良悪性鑑別の画像法は報告されていない。近年、chemical exchange saturation transfer(CEST)imagingの1つであるGAG CESTによりGAGを画像化できることが報告されている。本研究の目的は、軟骨形成性腫瘍におけるGAG CEST imagingの最適な撮像法・評価法を開発・検討しGAG CEST imagingによる軟骨形成性腫瘍の悪性度診断法を確立することである。ファントムデータを参考にGAG CEST効果の最適化を検討し、GAG CSETimagingのCEST効果の評価にはヒドロキシ基とバルク水の周波数の2峰性の信号抑制曲線であるZ-スペクトルと1.0ppmにおける信号強度の非対称性により評価し、GAGのCEST効果は1.0ppmと-1.0ppmの信号強度の差(MTRasym)として定量化した。研究期間中、約50例の骨腫瘍に対しGAG CESTの撮像を行い、腫瘍内のGAGのCEST効果を定量化し、評価した。評価した症例のうち、軟骨系腫瘍と診断された症例は4例(enchondroma・chondrosarcoma G1:3例、chondrosarcoma G3:1例)であった。4例に関して、ファントムデータの結果も考慮し、画像解析を行ったが、GAG CESTの定量化できたのは4例中2例のみで高悪性度のchondrosarcoma G3のほうが良性であるenchondromaより腫瘍内軟骨を反映するのではないかと推察されるGAG CEST値は低かったが、症例数が少なく統計学解析はできなかった。本研究では、GAG CESTにおける軟骨系腫瘍の良悪性鑑別の有用性を証明できなかったが、対象症例の収集・最適なGAG CEST値の算出に難航した点も要因と考えられる。
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