研究課題
本邦において、子宮頸癌の根治照射は中央遮蔽を含む外照射と腔内照射の併用が標準治療であり、本邦のガイドラインにも明記されている。同ガイドラインには外照射を20-40Gy施行した後、中央遮蔽を施行するよう明記されている。中央遮蔽により、直腸や膀胱などのリスク臓器の線量を低下させる効果があるが、この照射方法を標準治療として用いていない欧米諸国からは子宮頸部の主病変やリスク臓器に照射された線量が不明確になるとの批判があった。しかし、中央遮蔽を用いた本邦の治療スケジュールは欧米の治療成績と比較して同等で、合併症は少ない傾向が認められている。中央遮蔽がリスク臓器に対してどの程度線量低減効果があったかを算出し、晩期合併症発生の閾値となる線量や体積が存在するのかを検討することは非常に重要だと考えられる。また、リスク臓器の線量を評価する上で、腔内照射から寄与する線量を合算することは非常に困難である。そこで今回我々は本邦標準治療である中央遮蔽を含む線量分布を変形合算し、直腸や膀胱、小腸、骨盤骨などのリスク臓器に対して実際に照射された線量を評価することで合併症と線量の相関関係を調べた。しかし、腸管や膀胱に関しては腔内照射時に照射された線量分布の合算の質の担保が困難であり、今回の研究で詳細な解析結果を得るまでには至らなかった。骨に関しては線形変形の手法を用いることで再現性良く線量分布が合算可能であったため、今回は骨関連有害事象に絞って計画を進めた。本研究の成果として、恥骨や仙骨の骨折に関して腔内照射からの線量分布を含めた形で解析するのが最も鋭敏に骨折リスクを反映するとの結果が得られたため、現在論文作成中である。また、腸管や骨に関しても引き続き再現性良い合算手技を確立する方法を模索し、本邦における標準照射方法が各リスク臓器にもたらした真の線量分布と合併症リスク評価の線量指標を明らかにしてゆく。
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Journal of Radiation Research
巻: 59 ページ: 67-76
10.1093/jrr/rrx065.