研究実績の概要 |
本研究では左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)における心臓交感神経活性をPositron emission tomography(PET)で定量的に評価し、心臓交感神経活性と心機能・心不全の病態との関連性を検証した。27症例のPET検査を完了した。 PET検査では、炭素11標識したヒドロキシエフェドリン(11C-HED)を用い、心臓における交感神経(節前)機能を評価した。撮影のプロトコールはSchwaigerらが施行した研究プロトコールと同様の手順で行った(Hartmann Fetal.Heart.1999;81(3):262-70)。11C-HED投与30~40分後の集積値を左室心腔内に集積した平均値で補正した後期相(HED-Late)と、投与10~15分後の集積値を左室心腔内に集積した平均値で補正した早期相(HED-Early)とを算出し、両者の変化率を洗い出し率(WR=HED-Early-HED-Late/HED-Early)とした。 HFpEFでは対照群である心血管疾患の合併のない健常者や高血圧患者と比較して、HED-Lateが有意に低値であった(健常者:9.2±4.8 vs 高血圧患者:15.8±2.5 vs HFpEF:12.4±3.1(%/min), p=0.005)。またHFpEFでは分布域が幅広く、機能障害と関係する因子を検討したところ、心房細動を有するHFpEFにおいてβ遮断薬の内服がある群ではβ遮断薬のない群と比較して、HED-Lateが保たれていた(10.7±4.3 vs 3.9±1.3(%/min), p=0.02)。一方、洞調律のHFpEFにおいては、すべての症例でβ遮断薬を内服していたたため、β遮断薬内服の有無による比較はできなかった。以上より、心房細動を有するHFpEFではβ遮断薬の内服により心臓交感神経機能が保たれる可能性が示唆された。
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