研究課題/領域番号 |
17K16472
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小谷 晃平 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (50711793)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アシアロ糖蛋白受容体 / SPECT/CT / 定量解析 / 急性肝障害 / 肝予備能 / Tc-99m-GSA / 肝線維化 / 肝炎 |
研究実績の概要 |
急性肝障害はしばしば重症化し、集学的治療を必要とするが、肝障害の発症初期における重症化や予後を予測するモデルは明らかではない。我々が以前に行った予備研究では、急性肝障害の肝予備能評価のためにアシアロシンチグラフィを行った症例のうち、発症初期にSPECT/CT像で肝臓集積が低下し分布が不均一であった症例では急性肝不全に陥るものが多かった。そこで急性肝障害の発症初期にアシアロ糖蛋白受容体活性が低下している症例では、その後に重症化し予後不良である、という仮説を立てた。 急性肝障害の発症初期にアシアロ糖蛋白受容体活性の3次元定量解析を行い、重症化と予後との関連を調査する前向き研究は、2019年3月31日現在、予定症例数40例には達していないため症例のエントリーを継続している。本研究にて使用する放射性薬剤であるTc-99m-GSA(アシアロシンチ注)は年度末の時点で安定供給されており、画像解析ワークステーションは正常稼動している。エントリーされた症例については機能性肝体積、肝臓集積率、肝臓集積均一度の定量解析を行い、データ蓄積中である。 肝予備能評価のため過去にアシアロシンチグラフィを行った慢性肝胆道疾患症例について、SPECT/CT撮像によるアシアロ糖蛋白受容体活性の3次元定量解析が可能であった症例を検討したところ、肝線維化が進行した症例(F2以上)では肝線維化の軽度の症例(F1以下)と比べ、肝受容体結合率(LHL15)が低く、肝臓集積均一度が高いことが判明した。さらに、多変量解析にて肝臓集積均一度が進行した肝線維化(F2以上)の独立した寄与因子であることを確認した。そのため肝臓集積均一度は肝予備能だけでなく進行した肝線維化(F2以上)の評価に有用である旨を論文にて報告した(Kotani K, et al. Medicine. 2018 Aug;97(31):e11765.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2017年度上旬に、本研究にて使用する放射性薬剤であるTc-99m-GSA(アシアロシンチ注)の原料である人血清アルブミンの安定供給が困難なため、2017年8月に同薬剤が供給停止になる通知が製造元の製薬会社からなされた。そのため研究の遂行ができなくなる可能性があったが、2017年7月に同薬剤の安定供給再開が可能となった旨の通知がなされた。それを受けて研究計画書を当院の倫理委員会に申請し、2017年度末に研究承認を得たため研究の開始が遅れた。2018年度は患者のエントリーを開始し、年度末までに3例が登録されている。エントリーされた症例数が少ないため、結果の解析の段階には未だ至っていない。 アシアロ糖蛋白受容体活性の3次元定量解析による急性肝障害の重症化予知に関する前向き研究の開始が遅れたため、過去にSPECT/CTを用いたアシアロシンチグラフィを行った慢性肝胆道疾患患者51例を対象とした後ろ向き観察研究を行ったところ、肝臓集積均一度(集積の最大/平均比)が肝予備能だけでなく進行した肝線維化と関連することを見出した。そのため同内容については論文報告を行った(Kotani K, et al. Medicine. 2018 Aug;97(31):e11765.)。 また、過去にSPECT/CTを用いたアシアロシンチグラフィを行った症例を対象とし、撮像装置固有のbecquerel calibration factor (BCF)を用いて算出したstandardized uptake value (SUV)が、肝予備能の指標として従来から使用されている肝受容体結合率(LHL15)や血中クリアランス率(HH15)と相関することを昨年度の研究期間で明らかにしたため、SUVを用いた肝全体および局所肝機能の解析調査を現在継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
アシアロ糖蛋白受容体活性の3次元定量解析による急性肝障害の重症化予知に関する前向き研究については、引き続き症例エントリーを随時受付し、急性肝障害の発症初期と1-2ヶ月後にアシアロシンチグラフィを行い、SPECT/CT像から機能肝細胞量と肝内分布を定量評価する。症例のエントリー開始が遅れたため、当初の予定症例数である40例に達しない場合には15例エントリーされた時点で重症度および予後とシンチグラフィ定量値との関連を調査する。15例以上エントリーされそうであれば当初の予定である40例を目標に可能な限り症例を追加する。最終的な解析結果については学会報告や論文作成を行う予定である。 SPECT/CT像を用いたアシアロ糖蛋白受容体活性の3次元定量解析に関する後ろ向き研究については、急性肝障害だけでなく、慢性肝障害や肝硬変症例における肝内の集積度や分布も検討する。定量値に関して、機能性肝体積、肝臓集積率、肝臓集積均一度、SUVを評価項目とする。血液学的所見、超音波やエラストグラフィ、門脈血行動態や側副血行路についても調査を行い、SPECT/CTから得られた定量値との関連を解析する。解析結果がまとまった時点で学会報告や論文作成を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度から急性肝障害患者をエントリーしてアシアロシンチグラフィを行う予定であったが、アシアロシンチ注の供給停止の可能性が通知された影響により研究開始が遅れた。またエントリー患者が少なかったため、検査に使用する物品や薬剤購入のための費用が今年度は少なかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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