急性肝障害の発症初期における重症化や予後を予測するモデルを探索するため、アシアロシンチグラフィによる評価を行った。発症から3週間以内の発症初期にSPECT/CTを用いたアシアロシンチグラフィによるアシアロ糖蛋白受容体活性の3次元定量解析を行い、血液学的所見と比較検討を行った。急性肝不全に陥ったのは18%であり、いずれも非昏睡型肝不全であった。全例で昏睡に至ることなく改善し、死亡例は見られなかった。急性肝不全への進行に寄与する因子は単変量解析ではγ-GTP、MELDスコア、LHL15、3次元肝臓集積度(LUC)が抽出されたが、多変量解析では有意因子は見られなかった。入院期間の中央値は24日間であり、AIHで有意に入院日数が長かった(p=0.008)。入院期間に寄与する因子について、単変量解析ではPT活性、LHL15、LUCが寄与因子として抽出され、多変量解析ではLHL15が独立した有意な因子であった(p=0.018)。肝障害の発症初期と1-2ヶ月後の回復期でアシアロ糖蛋白受容体活性や肝硬度に有意な差は見られなかったが、肝脂肪量は回復期に有意に増加を示した(p=0.016)。 アシアロ糖蛋白受容体活性の3次元定量解析による急性肝障害の重症化予知に関する前向き研究の開始が遅れたため、過去にSPECT/CTを用いたアシアロシンチグラフィを行った慢性肝胆道疾患患者を対象とし、肝線維化とアシアロ糖蛋白受容体活性との関連を調査した。肝線維化進行群ではLHL15が低く(p=0.04)、肝臓集積均一度が高かった(p=0.02)。肝線維化進行に寄与する因子について多変量解析にて肝臓集積均一度が独立した有意な因子として同定された(p=0.04)。 急性肝障害の発症初期の治療期間の予測、慢性肝胆道疾患における肝線維化の予測にアシアロ糖蛋白受容体活性の定量解析が有用であることが示唆された。
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