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2017 年度 実施状況報告書

安全な子宮頚癌治療に向けた小線源治療専用の品質管理ツールの開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K16480
研究機関北里大学

研究代表者

野澤 茉莉花  北里大学, 医学部, 助教 (30773501)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード子宮頸癌 / 小線源治療 / 品質管理 / シンチレータ / 人体模擬ファントム
研究実績の概要

子宮頚癌の治療中にIr-192線源を追跡するためのデュアルピンホールコリメータ、シンチレータ、および電荷結合素子(CCD)カメラで構成されるピンホールイメージングシステムを開発した。CCDカメラは、オンラインで線源位置に対応するシンチレーション光の連続画像を撮影し、テンプレートマッチング技術を応用してシンチレーション発光点を自動で追跡し、三角測量の原理から三次元線源位置座標を測定する。本システムで測定された三次元の線源位置および停留時間は、基準値(装置の設定値)と比較して、それぞれ1.5±0.7mmおよび0.8±0.4秒であった。このシステムは、体内におけるIr-192線源をリアルタイムで追跡する可能性を有し、臨床設定におけるHDR brachytherapyの品質保証(QA)にとって有用なツールとなる可能性が高い。
また、一連のCCD画像を積算することにより、シンチレータの発光である画素値からの線源停留時間を算出することも可能となった。線源停溜時間と画素値との相関についての基礎的実験も終了し、強い線形相関(R2>0.99)があり、1Gyを超える線量を投与すれば再現性も十分に高いことも確認している。
さらに、より簡便なシンチレータ不要の可視化を進めており、γ線源による人体に近い水ファントムの発光(チェレンコフ光)の撮影に成功、従来よりも高精度に線源位置を測定が可能となっている。発光特性を調べたところ、線量分布との一致、線量応答の線形性、発光の再現性、線量率への依存性が小さい点など、品質管理ツールとして適していることが分かっている。
時間分解能に関してはシンチレータにイメージ・インテンシファイアを併用してチェレンコフ光を高感度に撮影する方法を開発し、CCDカメラ単独では不可能であった0.03秒の撮影時間での発光画像の取得が可能となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

子宮頚癌治療の品質管理における新しいツールとしてシンチレータを用いた手法を開発している。線源停止位置を精度よく把握するためにデュアルピンホールコリメータにシンチレータを併用した方法の開発を進めている。線源停溜時間と画素値に強い線形相関があることも確認しており、位置だけでなく線量も評価できる段階にすすんでいる。一方、時間分解能の精度向上を目指し、イメージ・インテンファイアを併用してチェレンコフ光を高感度に撮影する方法の開発も進めているが現状では未解決の問題があり検討中である。

今後の研究の推進方策

位置精度管理システムに関しては現在、論文化中である。
水の発光を用いた品質管理ツールの研究では、まず今までの成果を論文にまとめる予定である。
今年度は、リアルタイム測定の実現に向けて、時間分解能の向上を達成し、実用に耐え得る画像が撮影できるように仕上げていきたい。とくに、時間分解能に関する研究では、短時間撮影で画像内にノイズが発生することやsignal to noise ratioがよくないなどの課題が新たに出現している。今後、鉛遮蔽の改良やイメージ・インテインシファイアや光学系の微調整によって課題を解決できると考えている。
今までは四角の水槽を用いたシンプルな測定系であったが、今後はより実際の治療に近い測定系(患者プラン検証への応用)へと進める予定である。そのため、水の発光による品質管理ツール専用に、患者体内を模擬したファントム、アプリケータ固定具などを作成予定である。また、現在は2次元での発光測定にとどまっているが、測定法の工夫や画像再構成法の検討を行って3次元での線量分布測定を目指したい。
また、水の発光分布と線量分布が補正なしでよく一致する点が本研究のメリットであるが、補正を必要とする他エネルギー帯の先行研究と異なる理由がよく分からない。チェレンコフ光以外の発光が混ざっている可能性も考えられる。チェレンコフ光発生の閾値近くの中間エネルギーγ線による水の発光について、発光メカニズムを明らかにしたい。この研究を足がかりに、放射線による水の発光への理解を進め、他の放射線治療に対しても、簡便な水の発光を応用した品質管理ツールを提供する可能性を探りたい。

次年度使用額が生じた理由

当初29年度の購入予定であったパーソナルコンピューター(ノート型13インチSSD)の購入がまだ行われていないため、次年度使用額が生じた。今後、シンチレータ発光画像をデジタルで処理するため、画像の記録をおよび解析を行えるようパーソナルコンピュータを購入する。

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公開日: 2018-12-17  

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