研究課題/領域番号 |
17K16485
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
井上 達也 順天堂大学, 医学部, 助手 (00733362)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射線治療計画 / 線量分布 / 不確かさ / ロバスト性 / 多項カオス展開 |
研究実績の概要 |
強度変調放射線治療(IMRT)は標的への高い線量集中性と周辺の正常臓器への線量低減を同時に達成できる治療法であるが、反面、線量投与の精度は従来の放射線治療と比べて患者の体動やセットアップの不確かさの影響を受けやすいことが分かっている。治療計画の作成段階ではこれらの不確かさは考慮されておらず、線量分布への影響が問題となる。そのため、治療実施前に治療中考慮され得る不確かさに対する治療計画の頑健性を評価することは大変重要である。 本研究の目的は多項カオス展開法(PCE法)を用いて、治療計画装置で作成したプランを基に患者の体動やセットアップエラーを含んだ線量分布を精度良く、高速に近似計算する治療計画装置のメタモデルを開発することである。 PCE法を適用し、任意の様々なエラー下での線量分布を計算するためにはまず、ガウス求積法により決定されるある数のエラーを含んだ線量分布が必要である。平成29年度はPCEの理論を定式化するとともに、治療計画に用いるCT画像の座標情報を変更することで商用の治療計画装置にてエラーを含んだ線量分布を計算できる環境を整えた。IMRTの計画はTomoTherapy専用の治療計画装置であるPlanningStationを使用しており、DICOMデータを外部に抽出し複雑な処理を行う必要があったため、想定外の時間を要することが分かった。また、治療計画プランのロバスト性を評価できるように算出した複数の線量分布から1つの図上に標的、およびリスク臓器の線量体積ヒストグラムを表示させるプログラムの作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
エラーを含んだ線量分布の計算スキームや線量体積ヒストグラムの計算・作図を行えるプログラムは確立出来ているが、PCEを行えるプログラムの開発までは至っていない。これはプログラム構築のための数学的理論の定式化に多くの時間を要していることが原因である。特に良い近似精度を担保し、かつ治療計画装置上での計算回数・時間を減少させるために行うSparse grid法の解釈に時間がかかっているためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は引き続き理論の定式化を目指す。その後はPCE法を実装したプログラムをMatlabにより作成し、平成29年度までに確立したプログラムと併せることで治療計画のロバスト性を評価するためのツールを開発していく。また、治療計画装置で計算した結果と比較することにより近似計算の精度の検証を行っていく。今年度内に本研究課題を完遂させ、関連学会での発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に申請を行っていたワークステーション、およびソフトウェアの金額が大きく、千円単位での調整が難しかったため。 繰り越し金額に関しては平成30年度にプログラム開発に必要な書籍を購入予定である。
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