研究課題
特発性正常圧水頭症(iNPH)の脳微細構造の変化を解析するべく、iNPH患者の拡散MRIについての研究を行った。さらに新たに導入されたmagnetization transfer saturation index (MTsat)法をこれまでの次世代拡散MRIと組み合わせることにより、iNPH患者の脳ミエリン量についての解析を行い、成果を第45回日本磁気共鳴医学会大会、第47回日本神経放射線学会において発表した。従来の拡散テンソルを用いた検討では、iNPH患者の皮質脊髄路においてFAが上昇していることから神経線維が圧迫されて方向がそろっていることが示唆されており、次世代拡散MRIのneurite orientation dispersion and density imaging (NODDI)法や、脳ミエリンイメージングを組み合わせることによって、より広範囲の白質で神経の障害や変性を生じていることが示唆された。一方で、神経線維全体に対する軸索の径として定義されるg-ratioのMRIによる測定では、iNPH患者と健常群の間に有意差はみられなかった。g-ratioは非特異的な白質障害では変化を来さないと考えられ、iNPHによる白質の変化についても軸索やミエリンに特異的なものではないことが示された。また、これまでのiNPHに関する我々の検討を含めた知見のまとめについて、ソウルで開かれた3rd Frontiers of Neuroimaging Symposiumにおいて招待講演を行った。現時点での成果を国際的に発信するとともに、同分野全体の中における我々の研究の位置づけについて確認することができた。
2: おおむね順調に進展している
当院の最新鋭3T MRIで撮像された症例数が15例程度に達し、対象健常群のデータも集まっているため。また、既にいくつかの成果を学会において発表できているため。
症例数をさらに増やすとともにより詳細な解析法として、特定の神経線維に着目するtract-specific analysisや、全脳tract-based spatial statistics解析を行う。また、予後や治療可能性の予測としてこれらの解析結果が有用かどうかを調べるため、シャント術前後の定量値を比較する縦断的研究を行っていく。
予想されていた人件費・謝金が生じなかったことで支出額が低く抑えられた。一方で、学会出張による旅費が当初の計画より多く、これは次年度以降も継続して同程度の額の支出が予想される。購入を見合わせていた解析用PCやワークステーションなどの物品もあり、次年度に購入することを計画している。
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