研究課題
特発性正常圧水頭症(idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus: iNPH)の脳微細構造変化を解析することを目的とし、iNPH患者の拡散MRIについての研究を行った。前年度から引き続き、従来の拡散MRI手法に加えて近年導入されたOscillating gradient spin-echo(OGSE)法を適用した画像解析を行った。OGSE法では拡散時間という撮像パラメータを従来の手法と比較して大幅に短く設定することが可能となり、複数の拡散時間を用いて撮像したデータを対比することによって関心とする領域の拡散運動がどのような構造によって制限されているかを推定することができる。iNPHにおける応用については、この手法による解析結果を従来の拡散MRI手法による結果と合わせて検討することで、これまでに明らかにしてきた神経線維の微細構造変化について皮質脊髄路の神経が拡大した脳室に圧排されるモデルの妥当性を確認することができた。これらの内容について前年度の成果からさらなる解析を加えてカナダのモントリオールで開催された国際磁気共鳴医学会大会(ISMRM 27th Annual Meeting & Exhibition)で発表した。この内容については英語論文の投稿を予定している。また、近年画像診断の分野で盛んに研究が行われている機械学習についても研究に取り入れ、臨床的に鑑別が問題となるアルツハイマー病との画像分類について研究を行った。この成果をMagnetic Resonance in Medical Sciences誌に投稿し、査読の上掲載された。
3: やや遅れている
当院のMRIで撮像された患者群および健常対照群のデータが収集され、いくつかの成果について学術集会における発表、論文報告ができているものの、さらなる患者群のデータ収集が当初の予定より遅れているため。また、論文執筆作業がやや遅れているため。
拡散MRIの詳細な解析法として、特定の神経線維に着目するtract-specific analysisや、全脳tract-based spatial statistics解析を行う。また、これまでに得られた知見について論文の執筆、投稿を行う。
予想されていた人件費・謝金が生じなかったことで支出額が低く抑えられた。また、今年度については物品の購入を行わず、支出額が抑えられた。一方で、学会出張による旅費が研究期間全体で当初の計画より多くなっている。次年度も複数の学会への参加を予定しており、継続して支出が予想される。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Magnetic Resonance in Medical Sciences
巻: 19 ページ: 351~358
10.2463/mrms.mp.2019-0106