特発性正常圧水頭症(iNPH)の脳微細構造の変化を解析するべく、iNPH患者の拡散MRIについての研究を行った。 従来の拡散MRI手法に加え、次世代拡散MRIのneurite orientation dispersion and density imaging (NODDI)法やmagnetization transfer saturation index (MT sat)法を組み合わせることにより、iNPH患者の脳ミエリン量についての解析を行い、従来の解析で考えられていたものより広範囲の大脳白質で神経の障害や変性を生じていることが示唆された。一方で、神経線維全体に対する軸索の径として定義されるg-ratioのMRIによる測定では、iNPH患者と健常群の間に有意差はみられず、iNPHによる白質の変化は軸索やミエリンに特異的なものではないことが示された。 近年導入されたOscillating gradient spin-echo (OGSE)法を適用した画像解析を行った。これまでに明らかにしてきた神経線維の微細構造変化について皮質脊髄路の神経が拡大した脳室に圧排されるモデルの妥当性を確認することができた。 近年画像診断の分野で盛んに研究が行われている機械学習についても研究に取り入れ、臨床的に鑑別が問題となるアルツハイマー病との画像分類について研究を行った。 また、拡散MRIを臨床に応用する上で必要不可欠となる臨床用MRIの高速撮像についての研究も並行して行っており、LAVA-Flex法を応用した頚動脈MR angiographyの新しい高速撮像法の開発を行った。 これらの内容について、それぞれ国内・国際学会で発表を行い、英文学術誌に投稿した。また、本研究に関して特発性正常圧水頭症診療ガイドライン作成委員会に参加し、診療ガイドライン改訂に携わった。
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