研究課題
永久液状塞栓物質の1つであるn-butyl-2-cyanoacrylate (NBCA) は,血管内治療の際に優れた止血効果が認められる一方で,NBCAは血液接触直後に凝固が始まるため,瞬時にカテーテルを抜去する必要がある. マイクロバルーンカテーテルで血管を閉塞し血流制御下で,緩徐に塞栓術完遂が可能な塞栓法 (B-Glue) が考案されたが,マイクロバルーンカテーテルとNBCAとの接着に起因する合併症が危惧されている.本研究は,プラズマ技術を用いたマイクロバルーンの表面改質により,B-Glue時にNBCAと接着しない新規マイクロバルーンカテーテルの開発を目的としている.本年度は,申請時実験計画に基づいて以下を行った.1.フッ素添加ダイヤモンドライクカーボン (F-DLC) ナノ薄膜の被覆と接着性評価(in vitro).ポリウレタン(PU)ペレットをシート状に成型したPU平板にプラズマ表面処理を行い,F-DLCナノ薄膜を成膜後,バルーン拡張を模擬した引張試験を実施した.さらに,引張試験後の電子顕微鏡像から密着性を評価した.2.新規マイクロバルーンカテーテルのNBCA接着性評価 (in vitro) .密着性を向上させたF-DLCナノ薄膜被覆PU平板とNBCAとの接着強度を定量的に評価するため,NBCAにより試験板とF-DLCを接着し,せん断引張試験を行った.試料が強固に接着するまでの接着時間,試験後の接着痕,せん断引張強度によりF-DLCとNBCAの接着性を評価した.これら結果から最適なプラズマ表面改質条件を抽出し,マイクロバルーンカテーテルへのF-DLCナノ薄膜の成膜を行った.3.ウサギモデルを用いた予備実験(in vivo).生体内での新規マクロバルーンカテーテルの接着性評価のため,実験系の確立を目的としてウサギを用いた動物実験を行った.
2: おおむね順調に進展している
申請時の実験計画では,新規マイクロバルーンカテーテルの開発とin vitroでの評価が目的であった.研究については,おおむね順調に推移していると考えられる.
次年度は,生体内でのマイクロバルーンカテーテルの接着性を評価するため,ウサギの生体内での新規マイクロバルーンカテーテル閉塞下でのNBCA接着性評価 (in vivo)を引き続き行う.初年度に作製した新規マイクロバルーンカテーテルを用いて,in vivoでの新規マイクロバルーンとNBCAの接着性を評価し,必要に応じて新規マイクロバルーンカテーテルの改良を行う.
実験計画修正により旅費を繰越した為.次年度計画に組み込み使用予定.
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