研究課題/領域番号 |
17K16488
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石橋 直也 日本大学, 医学部, 助教 (40649331)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗がん剤結合PIポリアミド / 放射線治療 |
研究実績の概要 |
既に放射線増感効果が知られている抗がん剤シスプラチン類似化合物である白金錯体(Pt)をPIポリアミドに結合させたPIP-Ptを2種類合成しその作用を検討している。水酸基が結合した31-HというPIP-Ptとメチル基が結合した31-MeというPIP-Ptおよびシスプラチンを子宮頸癌細胞株HeLaに投与して放射線増感効果を検討している。PIP-Ptおよびシスプラチンを1pMから10nM の範囲でHeLa細胞に投与した後に1Gyから10Gyの範囲のX線を照射している。X線照射は日立X線照射装置(MBR-1520R-3)を用いて行っている。放射線増感効果はWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価により確認している。またPIP-Ptおよびシスプラチンの増殖抑制効果を検討するために先に1Gyから10Gyの範囲でHeLa細胞にX線を照射しその後1pMから10nM の範囲でPIP-Ptおよびシスプラチンを投与してWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価を行っている。現在はPIP-Ptの最も効果的なX線照射とのタイミングについてPIP-Pt投与前日から投与翌日2日後3日後にX線照射を行い検討している。またX線照射からWST法による細胞生存率の評価までのタイミングについてX線照射翌日2日後3日後にWST法を行い検討している。今後はシスプラチン同様に核DNA損傷を誘発する抗がん剤のアルキル化剤chlorambucilの結合したPIポリアミドPIP-ChBについても同様の実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コントロールとしての既に放射線増感効果が知られている抗がん剤シスプラチンの放射線増感効果の最も効果的な腫瘍細胞への投与量と投与とX線照射のタイミングが確立されていない。シスプラチンを1pMから10nM の範囲でHeLa細胞に投与した後に1Gyから10Gyの範囲のX線を照射している。放射線増感効果はWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価により確認している。1Gyから10GyのX線の照射のみによる細胞生存率の低下は確認されている。シスプラチン投与によりX線照射なしでも細胞生存率の低下は確認されている。そこでシスプラチンの投与量を減らしそれのみでは細胞生存率が低下しないがシスプラチン投与とX線照射により細胞生存率が低下する投与量と投与とX線照射のタイミングを検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
抗がん剤シスプラチンについて我々が実験に使用しているもの以外に新たにcis-Diammineplatinum(II)dichlorideを購入したので放射線増感効果の最も効果的な腫瘍細胞への投与量と投与とX線照射のタイミングを検討している。新たなcis-Diammineplatinum(II)dichlorideをジメチルスルホキシドに溶解しストック溶液を作成した。まずはジメチルスルホキシドを培地で希釈し細胞毒性を認めないDMSOの濃度を確認した。このDMSO濃度となるようにcis-Diammineplatinum(II)dichlorideを培地で希釈し1pMから10nM の範囲でHeLa細胞に投与した後に1Gyから10Gyの範囲のX線を照射する予定である。さらにcis-Diammineplatinum(II)dichloride投与前に1Gyから10GyのX線照射を行うことも検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
既に合成済みのPIP-ChB、PIP-Ptの放射線増感効果の検討中でありまた新たなPIP-Pt合成に必要な化合物の費用が見積もりより安価であったため。PIポリアミドの配列を変化させたPIP-ChB、PIP-Ptを9種類合成する。合成はペプチド合成機PSSM8を用いて行い、HPLCによる精製、質量分析機による分子量の確認後、実験に用いる。合成した各PIP-ChB、PIP-Ptを1pMから10nM の範囲で腫瘍細胞に投与し1Gyから10Gyの範囲のX線を照射する。放射線増感効果はWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価により確認する。化合物非投与群を陰性コントロールとし、加えて既存の抗がん剤chlorambucilやcisplatinそのものの放射線増感効果と比較する。用いる細胞株は臨床の現場で一般的に放射線治療が行われているヒト子宮頸癌や乳癌、肺癌由来の腫瘍細胞株を用いる。PIP-ChB, PIP-Ptを培養腫瘍細胞に投与し細胞内局在を確認する。細胞分画キットを用いて細胞質、膜・オルガネラ、核、細胞骨格マトリックスを連続して順次分画抽出する。その後各抽出液中のPIP-ChB, PIP-Pt量を高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いて定量する。この解析により、細胞内局在と放射線増感効果の強度に関連があるかどうか検討する。
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