放射線増感効果が知られている既存の抗がん剤シスプラチン類似化合物である白金錯体 (Pt) をPIポリアミドに結合させたPIP-Ptを複数合成した。まずはDNAに効率的に結合させるために標的遺伝子を特定しない短いPIポリアミドを合成した。このPIポリアミドにPtを結合させPIP-Ptを合成した。さらにこのPIP-Ptの末端に水酸基あるいはメチル基を結合させた31-Hおよび31-Meを合成した。合成はペプチド合成機PSSM8を用いて行い、HPLCによる精製、質量分析機による分子量の確認をした。これらの化合物は100%DMSOで容易に溶解可能であった。 合成したPIP-Ptの31Hおよび31-Meを1pMから10nM の範囲で腫瘍細胞に投与し1Gyから10Gyの範囲のX線を照射した。X線照射は日立X線照射装置 (MBR-1520R-3) を用いて行った。放射線増感効果はWST法による細胞生存率の評価とColony formation assayによるコロニー形成能力の評価により確認した。化合物非投与群を陰性コントロールとし、加えて既存の抗がん剤chlorambucilやcisplatinそのものの放射線増感効果と比較した。腫瘍細胞株は臨床の現場で一般的にシスプラチン併用の放射線治療が行われているヒト子宮頸癌HeLa細胞を用いた。 WST法において化合物非投与群と比べ生細胞数の減少が認める傾向にあった。 Colony formation assayにおいて化合物非投与群と比べ細胞生存率の低下が認める傾向にあった。 PtをPIポリアミドと結合させることにより放射線による効率的な核DNA損傷を引き起こした可能性がある。
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