研究課題/領域番号 |
17K16492
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
丸山 拓士 関西医科大学, 医学部, 助教 (20786678)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 乳び漏 / 胸管 |
研究実績の概要 |
本研究全体の目的は、胸管と下大静脈のバイパス術を経皮的に画像ガイド下に成功させ、リンパ液を静脈へ排出させると胸管内圧が低下することを動物実験で証明することである。 平成31年度の実験は胸管塞栓モデル豚を作成すること、正常モデル豚と胸管塞栓モデル豚における胸管と下大静脈の圧較差を明らかにすることを目的とした。過去の実験で胸管へのカテーテル挿入は経験があるが、胸管を塞栓物質で塞栓した(胸管塞栓モデル)豚の作成は行っていない。本年度は豚の胸管の経カテーテル的塞栓を行うこととした。同時に胸管の内圧測定及び胸管と下大静脈の圧較差検査を、塞栓前と塞栓後でそれぞれ行うこととした。 豚の鼠経リンパ節を超音波ガイド下に穿刺し、油性造影剤を注入しリンパ管造影を行った。胸管に油性造影剤が到達した時点でcone beam CTを撮影した。これで豚の胸管から鼠経リンパ管に至るまでのリンパ系の詳細な解剖学的情報を得ることができた。その後、得られたCT画像から安全な穿刺ルートを設定し、経皮経腹的に胸管を穿刺した。胸管にカテーテルを挿入し、胸管の内圧測定および静脈との圧較差を検査した。生体の胸管内圧の実測値の測定に成功したのは本研究が初めてと思われる。測定後、金属コイルを用いて胸管塞栓を試みたが、胸管を閉塞させることはできなかった。金属コイルは血液の凝固能を利用して塞栓効果を発揮するが、胸管内はリンパ液が流れており塞栓できなかったと考えられた。そこで凝固能に依らない液状塞栓物質による塞栓を併用し、塞栓に成功した。塞栓後、胸管の内圧測定および静脈との圧較差を検査し、塞栓前との比較データを得た。 今後、胸管と下大静脈のバイパス術を行う際に、本年度の実験で得た胸管への画像ガイド下アプローチ及び経カテーテル手技の技術的知見、胸管の解剖学的構造に関する知識、また内圧測定結果や圧較差検査結果といった臨床的知見を応用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胸管-下大静脈バイパス術を行うにあたり、本年度の実験で、豚の胸管に対する画像ガイド下アプローチ及び経カテーテル手技の技術的知見、胸管の解剖学的構造に関する知識、また内圧測定結果や圧較差検査結果といった臨床的知見を得た。豚を用いたバイパス術実験を行うにあたり必要な準備は整っており、また具体的に計画できていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
豚を用いた胸管下大静脈バイパス術を行う。申請者の考案した管腔臓器バイパス術を適用し胸管-下大静脈バイパス術を成功させる。バイパスにはチューブステントを用い、チューブを介したリンパ液の排出を留置直後と1週間後に確認する。留置1週間でステント留置部に瘻孔が生じるため、ステントを抜去し瘻孔だけでリンパ液が排出されることを抜去直 後と1週間後に観察する。これらの手術および観察は、正常胸管豚と胸管を経カテーテル的に塞栓した胸管塞栓モデル豚でそれぞれ行う。胸管塞栓モデル豚では側副路の出現とバイパスによる側副路の消失も重要な所見となるためコーンビーム CT をバイパス術前と術後1週間後、さらにステント抜去1週間後に撮像し、油性造影剤の分布を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は外瘻による胸管-下大静脈バイパス術が可能であることの確認に留めたため、支出が少なかった。正常胸管豚と胸管塞栓モデル豚を用いた内瘻による胸管-下大静脈バイパス術の動物実験は次年度に繰り越された。次年度ではこの動物実験費用に加えてバイパス術後の豚を1週間以上飼育する予定である。これらの費用に充当する必要が生じた。
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