【具体的内容】本研究の全体構想は胸管と下大静脈のバイパス術を経皮的に画像ガイド下に成功させ、リンパ液を静脈へ排出させると胸管内圧が低下することを動物実験で証明することである。令和2年度は豚の胸管を経カテーテル的に塞栓し、塞栓前後の胸管内圧測定及び胸管と下大静脈の圧較差検査を行った。平成31年度の実験で経皮経腹的に挿入したカテーテルを用いた豚の胸管塞栓に成功している。令和2年度の実験では統計学的検証のため同じ手法を用いて豚3頭に胸管塞栓を行った。豚の鼠経リンパ節を超音波ガイド下に穿刺、油性造影剤を注入しリンパ管造影を実施した。造影された胸管をレントゲン透視下に確認し経皮経腹的に穿刺、胸管にカテーテルを挿入した。豚胸管への経皮経腹的アプローチ法は確立されていないが我々は今回3頭全例で画像ガイド下に胸管へのカニュレーションに成功した。胸管内に挿入したカテーテルを用いて胸管の内圧測定を行った。また下大静脈にもカテーテルを挿入し、胸管と下大静脈の圧較差を検査した。測定後、金属コイル及び液状塞栓物質を用いて頸部胸管を塞栓した。塞栓後に再度胸管の内圧を測定し、続いて胸管と下大静脈との圧較差を検査した。得られた塞栓前後の胸管内圧の値を統計学的に解析した。塞栓後の胸管内圧は塞栓前の胸管内圧よりも有意に高いことが示された。 【意義、重要性】技術的知見:胸管への経皮経腹的アプローチ法を確立した。この手法は画像ガイド下に行うため低侵襲であり耐術能不良なリンパ漏の患者にも行える。臨床的知見:生体の胸管内に経皮経腹的にアプローチし胸管内圧のデータの取得に成功した。生体の胸管内圧の報告は本邦初と思われる。また頸部胸管の塞栓前より塞栓後の胸管内圧が有意に高いことを証明し、さらに胸管と下大静脈圧の圧較差データを取得した。これらは難治性リンパ漏の病態解明及び新たな画像ガイド下治療開発につながる重要な知見である。
|