雄性C57BL/6Jマウスを使用した。マウスは、非照射コントロール群(A群)、初回照射後12週の経過観察群(B群)、初回照射を行わず再照射のみ施行群(C群)、初回照射の7日後に再照射群(D群)、初回照射の12週後に再照射群(E群) に群分けし、初回照射15Gy、再照射10Gyまたは12Gyを施行した。マウスは再照射後6時間でTUNEL染色を用いて細胞死を評価した。細胞死を含む陰窩内における細胞死を起こしている細胞の割合をアポトーシス係数と定義し、定量的に計測した。放射線照射後72時間で安楽死前にブロモデオキシウリジン(BrdU)を腹腔内投与した上で腸管を摘出し、細胞増殖能を評価した。細胞増殖は陰窩内におけるBrdU陽性細胞の割合を細胞増殖係数と定義し、定量的に計測した。放射線照射後84時間では腸管陰窩幹細胞生存数を定量評価した。 初回照射・再照射とも細胞死を含む陰窩を有意に増加させた(A群→C群、B群→E群)。細胞死を含む陰窩の割合は、E群はC群よりも有意に少なかった。D群はC群とE群よりも有意に高いアポトーシス係数であった。B群はA群より細胞増殖係数は有意に低値であった。細胞増殖係数はC群とE群で有意差を認めず、D群はC群とE群よりも有意に低値であった。 初回照射・再照射とも腸管陰窩幹細胞生存数を減少させたが、A群とB群、C群とE群で有意差を認めなかった。 本研究で長期経過観察後の腹部への再照射における急性期反応は細胞死、放射線障害後の細胞増殖能ともに初回照射と同等であることを示した。一方で待機期間が短い場合には障害が増強されることが明らかになった。
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