研究課題
バイオマーカーに基づく発症前診断は先制医療実現の鍵を握っている。本研究では、先制的肝臓医療の実現に向けて、独自に発見した肝疾患の新規バイオマーカーであるTranslocator protein(18kDa)(TSPO)を起点とし、肝炎、肝硬変、肝がんへの発病と進行を低侵襲かつ高精度で捉えるTSPO-PET診断法を確立することを目的とした。これまでに我々は、ヒト肝臓検体とその臨床情報の収集と整合を行い、TSPOの発現とTSPOプローブである[18F]FEDACとの結合を調べた。最終年度であるR1年は、TSPOの遺伝子多型の分析を行い、肝疾患におけるTSPOの発現、[18F]FEDACの結合を定量し、相関性を解析した。ヒト肝臓検体を対象として免疫染色とARGにより、肝臓におけるTSPOの発現、[18F]FEDACの結合の定量解析を行った。その結果、病理スコアを3点以下と評価された検体においてTSPOの発現量は非常に少なく、[18F]FEDACの結合量は低いに対し、肝硬変を含めた3点以上と評価された検体では、病理の進行に呼応してTSPOの誘導発現が検出され、[18F]FEDACの結合量が上昇することが確認された。また、TSPO rs6971遺伝子多型を解析したところ、全検体にTSPOの遺伝子型Ala/Alaを持つ検体は25例、Ala/Thrを持つ検体は21例、Thr/Thrを持つ検体は4例が存在していた。肝臓TSPO rs6971遺伝子多型が[18F]FEDACの結合性の影響を評価し、[18F]FEDAC結合量はThr/Thrへの乖離が生じているが、Ala/AlaとAla/ThrへのTSPO発現量と高い相関性が示した。以上の結果から、[18F]FEDAC-PETはヒト肝疾患の進行を捉える診断法として有用であり、先制的肝臓医療の実現を支える基盤となっていくことが期待される。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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