がん放射線治療における個別化・精密化された医療体系を確立することを目的に、(1)解剖学的標準化と三次元統計解析手法: 患者間で異なる解剖学的特徴の標準化と臨床的に意義のある空間的パターンの抽出、(2)Radiomics: 関心領域内の画像特徴量の網羅的解析、(3)関心領域の自動抽出: 深層学習を用いたセグメンテーション、をそれぞれ要素技術として開発した。(1)解剖学的標準化と三次元統計解析手法においては、臓器形状に基づいた非剛体レジストレーションによる解剖学的標準化と、テンソル回帰を利用することで、臨床的なアウトカムと関連する三次元医用画像中の空間的パターンの抽出を可能にした。(2)Radiomicsにおいては、腫瘍画像の特定の画像特徴量と放射線治療後の局所制御率の関連について解析した。(3)関心領域の自動抽出においては、深層学習を用いた転移性脳腫瘍の自動検出について取り組み、高い精度を示すモデルの予備的な開発に成功した。 更に、これらの要素技術を有機的に組み合わせることによって、教師あり学習に用いるための大量のラベル付きデータを半自動的に収集・蓄積することが出来るソフトウェアを開発し、特許の出願を行った。本ソフトウェアにおいては、医師による医用画像情報の参照過程を再現するような、階層的に構造化されたアノテーションの付与を可能にした。更に、学習済みの深層学習モデルを組み込むことによって、新規のデータに対して候補となるアノテーション情報をユーザに提示することで、アノテーションに要する労力を大幅に省力化する仕組みも開発した。現在、本ソフトウェアに基づいた大規模な医用画像研究へと展開中である。
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