研究課題
最終年度である平成31年度においては、研究計画通り、平成30年度まで行ってきた小児肝移植患者の補体結合性を加味したドナー特異的抗HLA抗体と臨床経過の関連について解析をさらに進めた。その結果、ドナー特異的抗HLA抗体の存在と移植肝の線維化との有意な関連が確認された一方、補体結合性抗HLA抗体と肝線維化の関連は認められず、肝移植における補体結合性の解析の意義は現時点では認められないと考えられた。また、ドナー特異的抗HLA抗体量の指標となっている蛍光強度と補体結合性の間に有意な関連を認めており、補体結合性の追加解析をこれら蛍光強度によって代替し得る可能性が示唆された。これらの解析結果を国内の学術集会(日本移植学会総会、日本肝移植学会、など)や国外の学術集会(7th Congress of the Asian-Pacific Hepato-Pancreato-Biliary Association)、欧文誌(Pediatric Transplantation, 2020)にて報告した。さらに、免疫抑制療法の再至適化がドナー特異的抗HLA抗体に与える影響についても解析を行い、免疫抑制療法の再至適化とドナー特異的抗HLA抗体の消失との関連を一定程度認めている。これらの成果については、今後、国内外の学術集会で発表するとともに欧文誌にて報告する予定である。また、現在、肝線維化マーカーとして注目されているMac-2 結合蛋白糖鎖修飾異性体をはじめとする種々の免疫学的検査結果とドナー特異的抗HLA抗体、さらには移植肝の組織学的評価との関連についても解析を進めており、その結果についても国内外の学術集会等で発表していく予定である。今後は、肝移植におけるドナー特異的抗HLA抗体の意義を評価するため、長期にわたる組織学的所見の推移について解析を行う予定としており、このことにより、肝移植における免疫抑制療法の至適化が行えるものと考えている。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Pediatric Transplantation
巻: 24 ページ: e13648
10.1111/petr.13648