研究実績の概要 |
術前から存在するドナー特異的抗体(preformed DSA)を有する症例や術前クロスマッチ陽性症例において、抗HLA抗体のIgGサブクラスによって組織傷害性が異なる。preformed DSAおよびドナー非特異的抗体(non DSA)のIgGサブクラス解析については、血清中に含まれる有意なサブクラスをフローサイトメトリーで同定することは可能であった。この方法を用いて、腎移植においてクロスマッチ陽性症例および高感作症例に対する脱感作療法後のサブクラスの確認を行って、腎移植を施行し得た。しかしながら、luminex法の検出抗体をIgGサブクラスに分類することが困難であり、各抗HLA抗体がどのサブクラスかを同定するには至らなかった。 抗HLA抗体を含有するレシピエント血清存在下に、HLA ClassI・ClassII抗原をtargetとした細胞傷害性試験については、施行することができなかった。したがって、DSA、non DSAおよび交差反応抗原群(CREG)を有する症例の、レシピエントのFcγR遺伝子(FCGR2A, FCGR3A)の一塩基多型(SNP)によって細胞傷害が異なるか、判断することはできなかった。 FcγR遺伝子の SNPが移植臓器に対する機能障害および組織傷害に与える影響の解明については、機能障害について腎移植及び肝移植症例で検討したが、機当研究機関中には有意な影響を確認できなかった。また組織学的には、腎移植及び肝移植いずれにおいても検討することができなかった。したがって、この検討でFcγR遺伝子のSNPの違いによってDSAによる組織傷害のハイリスク群の同定には至らなかった。
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