研究課題
【研究背景】申請者らはこれまでに、移植前Mitomycin-C(MMC)処置による膵島グラフトの長期生着延長には、ドナー特異的免疫寛容が関与する可能性を示した。しかし、ドナー特異的免疫寛容のメカニズムは明らかではなかった。【目的】本研究の目的は、MMCを用いた移植前膵島処置による膵島内樹状細胞の形質変化(tolerogenic dendric cells、以後tol-DCと略)を介するドナー特異的免疫寛容の誘導について解明することである。【結果】Ⅰ.MMC処置膵島グラフトに対する免疫応答を評価した。糖尿病マウスの腎被被膜下にMMC処置ラット膵島を移植する移植モデルにおいて、免疫抑制剤なしに長期間(移植後100日)生着したグラフトに対する宿主免疫応答を免疫組織学的染色にて評価した。膵島移植後長期間血糖正常化を達成したすべてのマウス(n=4)で、ラット膵島の生着を確認した(インスリン染色)。また、移植グラフト周囲には宿主リンパ球が限局性に集簇して観察された。CD3およびCD45Rを用いて集簇リンパ球の組成を評価すると、中心にCD3陽性T細胞、辺縁部にCD45R陽性B細胞が極性をもって局在していることが明らかとなり、免疫寛容に関連する宿主免疫応答であると考察された。しかし、移植部位のCD25, Foxp3陽性細胞は確認されなかった。Ⅱ.膵島内の樹状細胞の分離をmagnetic cell sorting systemを用いて試みたが、評価に十分な樹状細胞は分離されなかった。【結論】移植前MMC処置移植グラフトに対する宿主免疫応答は、拒絶される非処置移植グラフトとは異なり、特徴的な免疫細胞の集簇として観察され、末梢性免疫寛容に関与すると考えられた。しかし、膵島内樹細胞の形質変化については評価が出来ず、明らかではない。
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