研究課題/領域番号 |
17K16521
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
清水 大 九州大学, 大学病院, 医員 (50723037)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 胃癌 / 肝転移 / FRAS1 |
研究実績の概要 |
我々は、肝転移を有する胃癌患者の原発巣で有意に発現が上昇している遺伝子群を、次世代シーケンサーを用いたtranscriptome解析により抽出し、その遺伝子群の中の1つであるFRAS1を胃癌肝転移関連分子として着目した。 14種の胃癌細胞株と正常腺細胞株であるFHS74intを用いたRT-qPCRを行い、胃癌細胞株の多くでFHS74intに比べてFRAS1は高発現していた。また、RT-qPCRの結果からFRAS1の高発現株の選定を行った。その上で、将来的なin vivo実験でのXenograft肝転移モデルの作成を前提として、BALB/cヌードマウスに胃癌細胞株皮下移植することで生着良好な細胞株の選定を行った。その結果から、研究対象の胃癌細胞株としてMKN1を用いることとした。 CRISPR-Cas9システムを用いてFRAS1のノックアウト株をsingle cell cloningで作成し、ノックアウトはsanger sequencingで確認した。MKN1のwild typeと比較して、FRAS1ノックアウト株のphenotypeの変化を確認した。WST assayにて、有意に細胞増殖能が低下した。また、adhesion assayでは細胞接着能の低下を認めた。また、wound healing assayでは細胞遊走能が有意に低下し、matrigel invasion chamberを用いたinvasion assayでは浸潤能が有意に低下した。 180例の胃癌原発巣を用い、RT-qPCRでFRAS1発現を調べた。胃癌原発巣におけるFRAS1高発現症例は低発現症例に比べて有意に累積肝転移発生率が高かった。肝転移再発に関する多変量解析を行ったところ、我々の胃癌コホートにおいては、FRAS1高発現はHR 4.05を伴い唯一の独立した肝転移予測因子であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度に得られた結果より、in vitroならびにex vivoでもFRAS1が胃癌の肝転移関連分子の有力な候補であることが示されたと考える。また、原発巣でのFRAS1発現は、肝転移予測のバイオマーカーとなる可能性も示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度の研究結果より、FRAS1が胃癌において癌遺伝子として作用し、かつ肝転移成立に関与している可能性が示された。今後は、wild typeとFRAS1ノックアウトを行った胃癌細胞株を用い、アポトーシスや細胞周期への影響も含め、FRAS1の下流に関わる関連分子の検討を行いたい。 胃癌肝転移関連分子候補の抽出にあたりtranscriptome解析に用いた症例は、Stage II/III症例であり、TS-1による術後補助化学療法を受けている。その中で肝転移再発を来してきていることから、ここから抽出されたFRAS1をはじめとする遺伝子群はTS-1耐性に関与する可能性も含んでいる。本邦における胃癌治療のkey drugであるTS-1の主成分である5-FUに対する感受性の変化に関して、FRAS1ノックアウト株を用いて評価したい。 さらに、免疫不全マウスを用いたin vivo実験により、肝転移成立への影響を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度の実験消耗品に使用予定
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